ネットやSNSなどで「年金をできるだけ早くもらって、それを投資に回せばトータルで得する」といった話題をよく見かけます。
新NISAなどの普及もあり、一見すると賢いマネーテクニックのようにも思えますが、実際のところ得策なのでしょうか。経済ジャーナリストでAll Aboutマネーガイドの酒井富士子さんに教えてもらいました。
繰上げ受給は「年4.8%の損」を確定させる行為
まず、年金の「繰上げ受給」についておさらいしましょう。これは、65歳から受け取れる年金の受給開始を前倒しすることができ、同時に1回当たりに受け取れる年金額が減っていく仕組みです。
受給開始を最大60歳まで早めることができますが、減額率は1カ月ごとに0.4%ずつ、年間で4.8%減ることになります(昭和37年4月1日以前生まれの方は減額率0.5%)。
早くに年金をもらえる一方で、注意すべきなのは、後から取り消すことができず、この減額された金額は一生涯にわたって固定される点です。
では、これを運用の世界(投資目線)で考えてみましょう。例えば、64歳で繰上げを選んだ時点で、これは一生涯、毎年4.8%の損を自ら確定させることになります。
もしも年金を投資に回してトータルでプラスにするには、世界的な大暴落が起きようが、毎年、確実に4.8%以上の利益を出し続けなければ割に合わない計算です。
近年では「オルカン(全世界株式)」などのインデックス投資が人気を集めており、平均利回りも5~8%という成績です。しかし、それはあくまで過去の長期的な平均データに過ぎず、毎年決まってそのパフォーマンスが保証されているわけではありません。
年金を「究極の安全資産」と考える
投資には必ず波があります。まさに今、懸念事項である中東情勢を引き金に、リーマンショックやコロナショックのような世界的な大暴落がいつ起きるかは誰にも予測できず、タイミングが悪ければ元本を大きく割り込むリスクがあります。
何より、毎日ハラハラしながら株価をチェックし、不安や心配に悩まされるストレスのほうが、運用の利益よりも大きなデメリットではないでしょうか。
日本の公的年金は、国が破綻しない限り、一生涯、決まった額をもらい続けられるという究極の安全資産です。目先の「早くお金を手にしたい」「投資で増やしたい」という誘惑に惑わされず、一生涯守られる最強の安心材料として捉えるのが、手堅い老後資金の守り方といえるのではないでしょうか。







