
うまくいくとは限らないのが親子関係。他人は「親子なんだから分かり合える」と言うが、当事者からすれば「親子だからこそ腹が立つ」ということもあるのだ。
親には、器用に生きられない子どもへのいらだちがあり、子ども側にはそんな自分を認めようとしない親への絶望感があったりもする。
離婚して戻ってきた娘
結婚した娘が5年後、3歳になる孫娘を連れて戻ってきたというトモミさん(63歳)。現在、娘は35歳、孫は小学1年生になった。
「同い年の夫は、今も現役で働いています。私もパートで仕事をしている。私たちにはもう一人息子がいるんですが、遠方で家庭をもっています。娘が離婚してボロボロになり、うちに帰りたいと言ってきたときは大歓迎したんですけど、一緒に暮らしてみるといろいろありますね」
学生時代から8年付き合って結婚したものの、結婚後すぐに夫の浮気が発覚、それでも我慢していた娘に対して、当時は「とにかくかわいそう。早く戻っておいで」と言ったトモミさんだが、同居してみると印象は変わった。
「娘の方もこんなはずじゃなかったと思っているかもしれませんが、とにかく彼女はだらしないんですよ。家事もろくにしないし、娘へのしつけもきちんとできない。そんなことじゃ学校へ行ったときに孫娘が困るだけだから、戻ってきてからは私が孫の母代わりとなってきました」
基本的なことだが、娘は自分の子に対して、箸使いや食事のルールもまともに教えていなかったとトモミさんは憤る。娘に注意すると、「私はお母さんに、いろいろうるさく言われるのが嫌だった。だから私は娘には自由にさせてやりたい」と反発された。
母に対して反発するように
「生き方や考え方が自由なのはいいけど、世間一般のマナーくらいはきちんと教えなさいと私は言いました。それでも娘は知らん顔。とにかく自分が言われて嫌だったことは娘にはしないの一点張り。仕方がないので、私が丁寧に孫に教えました。教えながら、ああ、確かに娘にはこんなに優しくしていなかったかもしれないと反省はしましたけど」
孫はトモミさんを慕ってくれ、「おばあちゃんがこう言った」と母親に言うようになった。娘としてはそれがまたいらだちの種となったのだろう。
「私から娘を奪わないでよと言われたこともあります。奪う奪わないという話ではない。みんなで愛情を注いで育てるべきでしょうと言ったんですが、『私は、お母さんのそういう理想主義が嫌い』って。結婚生活で傷ついたのだろうと最初は見守っていたんですが、それをいいことに娘は帰宅が遅くなったり、孫の前で私に反発したりするようになって」
娘は反抗期すらないくらいおとなしい子だったのに、変わってしまったとトモミさんは困り果てた。
どう付き合ったらいいか分からない
私は娘の母、娘もまた母となっている。大人同士として話し合おうとトモミさんは言ったが、娘は「私の結婚生活がうまくいかなかったのはお母さんのせい」と言い張る。
「なにもかも私のせいにする。あんたはあんたの人生を歩んできたんでしょうと言い返したら、『私を自立させなかったのはお母さんでしょ』と。確かに心配だから、子ども時代はいろいろ言いましたよ。でも大学生になってからは離れて暮らしていたし、干渉した記憶もありません。そうしたら『そのころからお母さんは私のことがどうでもよくなったんでしょ』って。何を言いたいのか分からないんですが、結局、彼女の年齢や知見に合わせた愛情を私から得られなかったことが、今になって腹が立つみたいで」
遠方の息子に電話でその話をすると、「お姉ちゃんはお母さんが大好きだったんだよ。だからこそ干渉されるのも嫌だったけど、放置されるのも嫌だったんじゃないの?」と言われた。そのつど、娘のことを考えて接してきたはずなのに、今さらそれについて怒られてもトモミさんにはなす術がない。
家を出てみるようすすめたら
「孫が小学校に上がるのを機に、近くでいいから二人きりで生活してみたらどうかと夫ともどもすすめてみたんですよ。頼っているくせに思い通りにならないとかんしゃくをおこす娘に、私はお手上げ状態だったので。すると娘は『一人で子どもを育てるのがどれほど大変か分かっていて、どうしてそんな冷たいことが言えるのか分からない』と。家を出て賃貸住宅を借りたら、すぐに行き詰まるって。経済的にも多少はこちらを頼っているのに、感謝の気持ちがまったくないんです」
どうやら戻ってきてから見つけた仕事に対しても、娘はいらだちを抱えているようだ。自分の能力を会社は分かってくれないと不平ばかりこぼしている。
「娘は自分を過大評価している。仕事があるだけありがたいと思いなさいと言ったら激怒されました。今は家庭内に冷たい空気が流れています。私はなるべく娘と顔を合わせないようにしていますが、それもまた彼女にとっては不快なのかもしれません」
人生がうまくいかないから親に八つ当たりをしているのは分かるが、どう対処していけばいいのか。孫の人格形成にもからむことだけに、トモミさんは自治体の窓口やカウンセラーなど、さまざまな場所や人に相談しているという。こういった事例は今後、増えていくのではないだろうか。







