
「フレフレ現象」が流行語になっている。これは「フレンドフレーション」のことで、フレーションとはもともと経済用語で物価変動を表す語。インフレ、デフレのフレーションである。若者たちは、今や友人関係でさえコスパで損切り、関係性によっては必要性の低い交際費は出す意味がないと考え、会わなくなるらしい。
「そんなあっさりと……」と思いがちだが、50代、60代こそ、このフレフレ感覚は身につけた方がいいのかもしれない。いや、すでに彼らにも始まっている現象ともいえる。そこにどれだけの意識があるかは分からないが……。
夫の役職定年で収入が激減
パートで働くミエさん(54歳)は2年前、3歳年上の夫が役職定年となり、世帯収入が激減したという。
「役職定年というと出世していた人が少しランクが下がって年収も少し減ってというイメージだったんです。でもうちの夫はそれほど出世していたわけでもない。年収が高かったわけでもない。それなのに役職がなくなって給与も4割くらい下がってしまったんです」
夫の勤務先は中期的目標として「若返り」をはかっている最中だったので、ミエさんの夫はその計画の標的になってしまったようだ。
「夫とは私が33歳のときに結婚したんですが、なかなか子どもができなくて。ようやくできたのが私が36歳のとき。年子で二人産みましたが、夫が役職定年になったときは子どもたちは高校1年生と中学3年生。先々の教育費を考えたら、これからお金がかかる時期です。でも当時は、支援金もなかった不妊治療にかなり使ってしまっていた。夫が今後、もっと稼げると想定していたから、あまり心配していなかったんです」
不妊治療のために会社を辞めたミエさんは、それからは倹約しつつも子育てを楽しんだ。ママ友や前職の仲間などとも積極的に付き合った。人間関係は大事だと思っていたからだ。
身の丈以上の付き合いはしないと決めた日
「ただ、夫の役職定年でふっと考えたんですよ。私が大事だと思っていた友人関係だって、振り返ってみれば些細な裏切りとガッカリの連続だった。私、嫌と言えないところがあるので、けっこう人に利用されてしまうところがあるんです。保護者会の役員を連続でやらされたり、謝恩会の幹事になってしまったり。『文句を言わずに一生懸命やってくれるから、なんでも押しつけられるのよ』と親しい人には言われましたが、性格なんてそう簡単には変えられない」
人にいい顔をして、いろいろな場に顔を出してきたのは、みんなと仲よくしたかったし、子どもたちにも人との関係は大事だと教えたかったから。だがその結果、自分の時間がなくなったり逆に子どもに我慢させたりすることもあった。
「付き合いにはお金も使いますしね。こんなことをしている場合じゃない、もっとパートで稼ぐなり、少しでも自分のスキルを上げたりした方が身になると悟りました」
まずは自分や家族を優先させ、余力があれば付き合うことに決めたという。
付き合いが悪くなったとは言われたけど
近所のママ友数人とは、時々ランチに行く仲だったが、それも3回に1回くらいしか行かなくなった。
「彼女たちとの付き合いから何か生まれたかな、自分が使った費用に見合った何かを得たかなと思ったら、この関係はもう少し薄くてもいいんじゃないかと思えてきて。でも周りには奇異に映ったみたい。どうしたの、付き合い悪くなったわねなんて言われました。ちょっと時間がなくてと言い訳したけど、付き合いが減っても特に寂しくはなかった。むしろランチ代が浮いて助かったと思えました」
もちろん、「もっとお金がたっぷりあるなら、そういう付き合いも心から楽しめるのかもしれないけど、今どきそういう人も少ないんじゃないでしょうか。だったら思い切って、自分のスタンスを変えていくしかない」とミエさんは声を落とした。
時間と費用と手間を、どこにどう分配していくかは、各自の状況によるものだから、結果的に「フレフレ現象」はどの世代にもあてはまるのかもしれない。
人間関係にも優先順位が必要
「ただ、大事な友人が困っているときは駆けつけて親身になりたい。若いときは友達がたくさんいた方がいいと思っていたけど、そういう大事な人は実際にはたくさんはできないし必要ない。互いを思い合える友人は少しでいいと思うようになりました」
夫にも大事な友人がいるのをミエさんは知っている。おそらく妻の自分に言えないことも、学生時代からの付き合いの彼には話しているのだろう。
「この先、子どもたちが巣立っていったときに、また周囲の友人たちとの関係も変わるのかもしれない。人生、そのつど優先順位が変わるのはやむを得ないんでしょうね」
友人損切りというわけではない、そういう冷たい気持ちではなく、今の自分に必要なことに優先順位をつけるだけだと、ミエさんは重ねて言った。







