
京都府南丹市で男子児童の遺体が見つかった事件で、養父が遺体遺棄を認め、殺害もほのめかしているという。この一件で「やっぱり子連れ再婚は危険」「シングルマザーは恋愛などするな」という方向に世論が流れつつあるのが気になるところだ。報道することはもっとたくさんあるはずなのに、テレビでは毎日、このニュースを流し続けていた。まるで視聴者を洗脳するかのように。その報道のありようの方がよほど危険なのではないかと危惧する。
「子連れ再婚は危険」と決めつけてはいけない
2024年度の児童相談所における児童虐待相談対応件数は22万件を超えている。また、厚生労働省「令和5年度福祉行政報告例(児童福祉関係の一部)の概況」によると、主な虐待者は「実母」(48.7%)、「実父」(42.3%)であり、実父母が約9割を占めているのが実態である。子連れ再婚は危険、と決めつけてはいけない。
また、警察庁統計によれば、日本における殺人事件の約半数が家族を主とした親族間で起きている。家族が密接になり過ぎるのか、理想の家族像を追い求め過ぎているのか、いずれにしても家族との距離感がおかしいのだろう。
以前、ステップファミリーを取材したことがあるが、「血のつながりのない親子だからこそ、気を配っている」という人たちが大半である。「努力しなければ家族になれないと覚悟を決めての再婚」だったわけだが、努力し過ぎるとみんなが緊張してしまうから、そこは夫婦がどれだけ話し合っていい雰囲気を作るかが大事だと話してくれた人もいた。だが一方で、「家族になる必要なんてない。両親は愛し合って再婚したが、子どもに自分を親だと思えとは言えなかったから、とにかく仲よくやっていこうぜというノリを作った」といった男性もいた。
「家族になる」「家族でいる」ことはある種の呪縛なのかもしれない。
再婚は珍しい話ではないけど
2024年の人口動態調査によれば、婚姻件数全体に占める再婚の割合は24.2%で、約4組に1組が夫婦のどちらか一方、あるいは両方が再婚である。再婚は珍しい話ではなくなっている。
5年前、双方とも子連れで再婚したリカさん(42歳)は、大変だったこの5年を振り返ってくれた。どちらも離婚からの再婚で、再婚当時、夫の子は6歳、リカさんの子は10歳。ともに女の子だ。
「夫は娘が1歳のときに離婚、私は娘が3歳のときに離婚。どちらも別れた親のことをあまり覚えていない。そこがラッキーだったのかもしれません。私たちは付き合って1年ほどで再婚を意識したけど、とにかく子どもがどういう反応をするのかが分からないから、しばらくは子どもたちには会わせなかったんです」
娘の後押しで再婚を決意
再婚という形をとらずに付き合っていくだけでもいいと考えていた。同居する実母にもその話はしていたが、意外にも「お母さんも、いい人がいたら再婚すればいいのに」と言いだしたのは娘だった。
「娘が仲よくしている子のお母さんが再婚したらしいんです。その子が『新しいお父さんがいつも一緒に遊んでくれる。遊園地にも行ったの。楽しかったよ』という話を聞いて、自分もお父さんがほしいと思ったみたい。そこから徐々に会わせるようになったんですが、相性がよかったんですかね、短期間で打ち解けました」
リカさんも彼の家で、彼の娘に何度か会った。リカさんの娘はもともと明るくて物怖じしない子だが、彼の娘は少し恥ずかしがり屋だった。それでも何度か会ううちに素直で優しい子だと分かっていく。
「再婚によって、娘たち二人のいいところを消すようなことがあってはならない。それだけは慎重になりましたね。かといって本音で話さないのもきっとよくない。最後は『子どもたちに悪影響があったら即離婚しよう』と腹を決めました」
やっと言いたいことを言い合える関係に
他人同士が生活をともにするのは難しい。大人同士だってそうなのだから、互いの子どもがいる状況ではなおさらだ。リカさんは夫の娘を、夫はリカさんの娘を、なるべく気遣うようにしてきた。
「3年くらいたったときでしょうか、私の娘が私に嘘をついたんですよ。私がギャーギャー怒っているのに娘は反抗的な態度を崩さなかった。黙って聞いていた夫が、嘘をついた理由を問いただした。『これは大事な問題だよ』と冷静に聞く耳をもった。すると娘が、友達を庇うために嘘をついたことが分かったんです。夫は友達を庇った娘を褒めると同時に、嘘をつかれたお母さんの気持ちも考えた方がいいと言ってくれて。娘は私を見ながら、『そうだね……ごめんなさい』と。分かればいいさと夫はニッコリ。みんなでパフェでも食べに行くかと近くのカフェに行きました。そのあたりの匙加減が夫はうまいんですよ。私はなかなか彼の娘を叱れずにいたけど、最近ようやく自分の娘と同じようにビシバシ文句を言うようになりました。彼女も『ったく、うるさいなあ』とニヤニヤしながら反抗してくる。やっとみんなが言いたいことを言えるようになった気がしますね」
それでもまだ気を緩めてはいけないとリカさんは言うが、夫は「もっとのんびりやろうよ」と言っているそうだ。放置してはいけないが、神経質になり過ぎてもいけない。子どもたちはいつか巣立っていく存在だから、なるべく自由にさせたい。それが夫の意見だという。ついかまい過ぎてしまうリカさんと補完しあえる関係なのかもしれない。
<参考>
・「令和6年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数」(こども家庭庁)
・「令和5年度福祉行政報告例(児童福祉関係の一部)の概況」(厚生労働省)
・「令和6年の刑法犯に関する統計資料」(警察庁)
・「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」(厚生労働省)







