なぜ今、上限が引き上げられるのか?
令和7年(2025年)の年金法改正により、厚生年金保険料の計算の基礎となる「標準報酬月額」の上限が、現在の65万円から75万円へと段階的に引き上げられます。厚生年金保険料は、月収を一定の幅(等級)で区切った「標準報酬月額」に保険料率をかけて算出されます。ただし、この等級には上限があり、現在は第32等級の65万円が天井です。
そのため、月収が65万円を超えていても、厚生年金保険料は標準報酬月額65万円分で頭打ちとなり、それ以上収入が増えても保険料は変わらない、将来の年金額にも反映されにくい、という仕組みになっていました。
今回の改正は、賃金水準の上昇に合わせて、高所得者も収入に応じた保険料を負担し、現役時代の収入に見合った年金を受け取れるようにする狙いがあります。
「標準報酬月額」の上限が引き上げに?(画像:PIXTA)
3年かけて上限は65万円→75万円へ
今回の引き上げは、企業や個人への急激な影響を避けるため、令和9年(2027年)9月から3段階で実施されます。等級も第32等級から第35等級まで拡大されます。
- 現在:第32等級……65万円(月収63万5000円~66万5000円)
- 令和9年(2027年)9月~:第33等級……68万円(月収66万5000円~69万5000円)
- 令和10年(2028年)9月~:第34等級……71万円(月収69万5000円~73万円)
- 令和11年(2029年)9月~:第35等級……75万円(月収73万円以上)
月収が65万円を超える人は、収入に応じた保険料負担となり、その分将来の年金額にも反映される仕組みになります。
厚生年金保険料はどれくらい増える?
読者が最も気になるのは、「保険料はいくら増えるのか?」「手取りはどのくらい減るのか?」という点でしょう。標準報酬月額75万円に該当する人(月額報酬73万円以上)の場合、本人負担の保険料は最大で約9150円/月の増額、年間では約11万円の負担増となります(労使折半後の本人負担分)。
ただし、厚生年金保険料は全額が社会保険料控除の対象となるため、所得税・住民税が軽減される効果もあります。
将来の年金額が増えるメリット
厚生年金保険料が増えれば、将来受け取れる老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額も増加します。厚生労働省の試算によると、標準報酬月額75万円で10年間保険料を納め続けた場合、将来の年金額が月額で約5100円増、年額では約6万1000円増となる見込みです。
平均余命まで受給すると仮定すれば、支払った保険料の増額分は十分に回収できる計算になり、高所得者にとっては「長生きリスクへの保険機能」が強化されるともいえます。
今回の改正は特に年収800万円~1000万円超の層に影響しますが、今後は基礎控除の引き上げ、在職老齢年金の基準額緩和なども予定されており、家計への影響は制度全体で見ることが大切です。







