老後に欠かせない「交際費」と「娯楽費」ですが、その使い方によって、気持ちにゆとりを持って生活できる人もいれば、「いつもお金が足りない……」「損した」と感じてしまう人もいます。今回は、一生貧乏になりやすい人、豊かに暮らせる人のお金の使い方を紹介します。
老後の生活費の約2割!「楽しみ」にかかるお金の平均額
定年後は働き方が変わり、家や地域で過ごす時間が長くなります。その分、心の充実や日々の楽しさを生むための「交際費」と「娯楽費」は、削ってはいけない大切な予算です。総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、高齢無職世帯の平均支出は以下のようになっています。
【65歳以上の夫婦のみ無職世帯】
・交際費:約2万3888円(消費支出の9.3%)
・娯楽費:約2万5377円(消費支出の9.9%)
・合計:約4万9265円(消費支出の19.2%)
【65歳以上の単身無職世帯】
・交際費:約1万6460円(消費支出の11.0%)
・娯楽費:約1万5492円(消費支出の10.4%)
・合計:約3万1952円(消費支出の21.4%)
総務省統計局の「家計調査報告」では、例えば「交際費」に香典や贈答品など世帯外への移転支出が含まれ、「教養娯楽費」として書籍・教養費等も含まれるため、日常の“交際費”“娯楽費”という使い方とは必ずしも一致しません。
ここでは、統計データを“老後の生活費の大まかな目安”として参考にしつつ、記事の後半ではより生活に近い意味での「交際費」「娯楽費」を取り上げています。
一生貧乏コース?「寂しさ」を埋める受け身の出費
同じ金額を使っているように見えても、「幸せにつながるお金の使い方」と「なくなるだけの浪費」では、その後の満足度がまったく異なります。一生貧乏になりやすい人の共通点は、自分の意思ではなく“受け身で使ってしまうお金が多い”ことです。例えば、こんな人いませんか?
「こんなこと言うのもアレだけど……」という前置きから始まり、先日参加した食事会のグチが止まらない人。「料理はイマイチだったのに会費が高くて」「自慢話ばかり聞かされて疲れた」と不満ばかり。また、旅行の話でも「誘われたし、断ると角が立つから行ったけど、気疲れして翌日寝込んじゃった」とため息をつく人。
「そんなに嫌なら、参加しなければいいのに……」と思ってしまいますが、当の本人は「断れない呪縛」から抜け出せずにいるのです。こうした「受け身の出費」は、大きく「交際費」と「娯楽費」の2つに現れます。
●交際費:自分の気持ちよりも、相手の反応を気にしすぎる
・気乗りしない飲み会:「付き合いが悪いと思われたくない」と無理に参加する。
・惰性の贈り物:何十年も続けているお中元やお歳暮を、やめるタイミングを失って続けている。
・孫や親戚への過剰な出費:「お金を出さないと来てくれないかも」という不安から、身の丈以上のお祝いや小遣いを渡してしまう。
●娯楽費:「暇つぶし」に消えていく
・テレビ通販の衝動買い:特に欲しくないのに、番組を見ているうちになんとなく注文してしまう。
・目的もないのにぶらぶら:「暇つぶし」のつもりでショッピングセンター、パチンコ店などに立ち寄ってしまう。
●なぜ、お金を使っても満たされないのか?
これらの出費に共通しているのは、「主役が自分ではない」ということです。交際費においては、「自分が会いたいから」ではなく「相手の期待に応えるため」にお金を使っています。娯楽費においては、「楽しみたいから」ではなく「時間の空白を埋めるため」だけ。
自分の「好き」や「心地よさ」が置き去りになっているため、いくらお金を使っても心は満たされず、後に残るのは「むなしさ」と「減った残高」への後悔だけ。これが、心もお財布も寂しくなってしまう「一生貧乏コース」の正体なのです。
豊かに暮らす人のお金の使い方:自分軸の「好き」を知っている
豊かに暮らす人は、交際費や娯楽費を「義務」や「暇つぶし」ではなく、“自分が心地よく暮らすための潤滑油”として使っています。例えば、生き生きと暮らすAさん(70代)は、笑顔でこう話します。
「仲良しグループで月1回、麻雀をするのが楽しみ。お金は賭けず、わいわいとゲームを楽しむだけ。その代わり、みんなで得意料理やおいしいお菓子を持ち寄って、休憩時間にいただくのが最高に幸せです。『今度はどんなお料理を持っていったら喜ばれるかしら?』と考えるのが楽しくて、最近は料理番組やYouTubeの動画をチェックして、いろいろなレシピにトライしています」。
Aさんのように、豊かに暮らす人は「お金をたくさん使う」ことではなく、「工夫して楽しむ」ことに喜びを見出しています。
自分軸を持っている人のお金の使い方は、交際費と娯楽費において以下のような傾向があります。
●交際費:「自分が本当に会いたいか」「その場を楽しめるか」
・趣味の仲間との交流:ハイキングや手芸、読書会など、共通の話題があるサークル後のランチ代。
・前向きな情報交換:健康づくりや新しい学びについて語り合える友人との喫茶代。
ここでは「好き」を共有することが目的なので、見栄を張って無理におごったりする必要がありません。価値観が合うため、お金をかけ過ぎなくても、対等で心地よい関係が続きます。
●娯楽費:「好奇心」を満たすため
・体験へ使う:行ってみたかった場所への旅行、美術館巡り、映画鑑賞。
・健康へ使う:長く歩ける体を維持するためのウオーキングシューズや、フィットネス利用料。
・学びへ使う:歴史講座やパソコン教室など、知的好奇心を満たすものに使う。
●なぜ、お金を使うほど幸せになるのか?
豊かに暮らす人に共通しているのは、基準が他人の目ではなく、「自分が本当に楽しめるかどうか(自分軸)」に置かれていることです。
「付き合いだから」と嫌々出す1万円と、「行きたかったから」と喜んで出す1万円。金額は同じでも、心の満足度は天と地ほどの差があります。自分軸で使ったお金は、後に「楽しかった!」「勉強になった!」という充実感を残し、それが「明日も元気に過ごそう」という活力に変わります。
使ったお金が、ただ消えるのではなく、「思い出」や「健康」「知識」という見えない資産として積み上がっていく。これが、豊かに暮らす人が持っている好循環の正体です。








