電車内や人混みで急に強い不安におそわれる場合、「広場恐怖症」の可能性も
広場恐怖症の原因・きっかけは?「最初の1回」が恐怖を固定化する可能性
広場恐怖には、「人混みが苦手だから不安が出る」のか、「不安が出た経験があるから人混みが苦手になる」のか、いわば「卵が先か、ニワトリが先か」に似た問題があります。一般的には、「人混みで不安症状が出現した経験が、人混みを恐れるきっかけになる」と考えられています。つまり、不安が出なければ恐怖は徐々に薄れ、人混みに入れるようになるということです。
広場恐怖症の治療法……SSRIなどの薬物治療・認知行動療法・頓用薬の注意点
人混みで現れる不安症状の原因は、脳内にあるようです。具体的には、脳内の神経伝達物質の1つである「セロトニン」の機能に何らかの変調が起き、不安のレベルが過度に強まることで、広場恐怖症につながると考えられています。基本的な治療法は、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」というセロトニンの変調を修復する治療薬です。SSRIには即効性はありませんが、毎日決められた量を3カ月ほど続けていくと、効果がはっきり出てきます。そのため、効果が感じられないからと1~2カ月で服薬を止めてはいけません。患者さんに処方するときは「最初の3カ月は効果を感じられなくても、ちゃんと飲み続けてください」と伝えることが多いです。あわせて、認知行動療法などで、考え方の癖を根本的に修正していけるようにサポートします。いずれも焦らずに治していくことが大切です。
広場恐怖症の患者さんで、「仕事で新幹線に乗らなければならない」「何とかして今月コンサートに行きたい」といった切迫した事情がある場合は、SSRI以外の即効性のある頓用薬を併用することもあります。具体的には、ベンゾジアゼピン系抗不安薬です。しかしこれらの頓用薬は、長期間漫然と使うと依存リスクがあり、注意が必要です。あくまでSSRIが効いてくるまでの補助的な位置付けとして使用し、「お守り」として持っておく程度にしたほうがよいとお願いしています。
人混みでの強い不安感は、性格のせいではありません。医学的にもきちんとした対処法があります。必要なサポートを受けながら、無理のないペースで向き合っていきましょう。







