メンタルヘルス

人混みや電車が苦手……急に不安や息苦しさを感じるのは性格のせい? 「広場恐怖症」のサインと対処法

【精神科医が解説】人混みで突然不安や息苦しさを感じる場合、「広場恐怖症」の可能性があります。治療の基本はSSRIという薬です。分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)

中嶋 泰憲

中嶋 泰憲

メンタルヘルス ガイド

精神科医

慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学先でのカルチャーショックから、自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人のメンタルヘルスの重要性を悟りました。精神病院の現場から、みなさまの毎日の心の健康管理にお役に立てるよう、メンタルヘルスに関する情報発信を行っていきます。

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混雑した電車

電車内や人混みで急に強い不安におそわれる場合、「広場恐怖症」の可能性も

人混みが苦手な方は珍しくありません。多くの場合は不快でも我慢できるレベルですが、なかには急に不安が押し寄せ、呼吸がうまくできなくなるほど強い症状が現れる人もいます。こうした不安症状が起きると、人混みそのものが怖くなる「広場恐怖」に発展しやすくなります。

広場恐怖症の原因・きっかけは?「最初の1回」が恐怖を固定化する可能性

広場恐怖には、「人混みが苦手だから不安が出る」のか、「不安が出た経験があるから人混みが苦手になる」のか、いわば「卵が先か、ニワトリが先か」に似た問題があります。

一般的には、「人混みで不安症状が出現した経験が、人混みを恐れるきっかけになる」と考えられています。つまり、不安が出なければ恐怖は徐々に薄れ、人混みに入れるようになるということです。

広場恐怖症の治療法……SSRIなどの薬物治療・認知行動療法・頓用薬の注意点

人混みで現れる不安症状の原因は、脳内にあるようです。具体的には、脳内の神経伝達物質の1つである「セロトニン」の機能に何らかの変調が起き、不安のレベルが過度に強まることで、広場恐怖症につながると考えられています。

基本的な治療法は、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」というセロトニンの変調を修復する治療薬です。SSRIには即効性はありませんが、毎日決められた量を3カ月ほど続けていくと、効果がはっきり出てきます。そのため、効果が感じられないからと1~2カ月で服薬を止めてはいけません。患者さんに処方するときは「最初の3カ月は効果を感じられなくても、ちゃんと飲み続けてください」と伝えることが多いです。あわせて、認知行動療法などで、考え方の癖を根本的に修正していけるようにサポートします。いずれも焦らずに治していくことが大切です。

広場恐怖症の患者さんで、「仕事で新幹線に乗らなければならない」「何とかして今月コンサートに行きたい」といった切迫した事情がある場合は、SSRI以外の即効性のある頓用薬を併用することもあります。具体的には、ベンゾジアゼピン系抗不安薬です。しかしこれらの頓用薬は、長期間漫然と使うと依存リスクがあり、注意が必要です。あくまでSSRIが効いてくるまでの補助的な位置付けとして使用し、「お守り」として持っておく程度にしたほうがよいとお願いしています。

人混みでの強い不安感は、性格のせいではありません。医学的にもきちんとした対処法があります。必要なサポートを受けながら、無理のないペースで向き合っていきましょう。
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