しかし、ひとりの老後には、思わぬ落とし穴があります。元気で自立しているうちはよくても、頼れる人がいないと想定外にお金がかかるもの。今回は、孤独によるリスクを防ぎ、心豊かに暮らすためのヒントを考えてみましょう。
データで見る!老後の家事・生活支援にかかる費用
総務省が発表している家計調査(令和6年)によれば、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の消費支出は「約25万円」、単身無職世帯は「約15万円」。1人暮らしは生活コストを分け合えないため、食費や光熱費が割高になりやすいですが、人付き合いに気を使わず、気ままに過ごせるのは大きな魅力です。しかし、この気楽な生活は、元気で自立しているうちだけと言っても過言ではありません。年齢を重ねると、家事や買い物が負担になり、外部サービスに頼らざるを得なくなることもあるでしょう。
例えば、介護大手のニチイが行う家事支援サービスでは、スポット利用で1時間当たり6000円台。月1回以上の定期プランでも、1時間4000円台の費用がかかります(いずれも東京エリア)。また、カジタク(イオングループ)などの、掃除サービスのスポットプランは、2時間で1万円を超えるケースが一般的です。
これらを毎週利用すれば月2万~4万円、年間では30万円前後かかることもあります。有料サービスは丁寧で安心できる半面、定期的に頼むとなれば家計を圧迫するほどの支出といえるでしょう。
だからこそ、普段の「ちょっとした困りごと」を気兼ねなく頼めるような、ゆるいつながりを日頃からつくっておくことが大切です。
要注意!頼る人がいないと困ること、あれこれ
ひとり老後で最も大きな不安は、病気や介護が必要になったときでしょう。身元保証や医療判断など、これらの問題には、たとえゆるいつながりがあっても、家族や専門的な有料サービスに頼らざるを得ません。加えて、それ以前の「ちょっとした困りごと」が積み重なることこそが、ひとり老後の大きな負担になるのです。頼れる人がいないと、これらの細かな家事や生活のサポートを、全て外部サービスに頼る必要が出てきます。
例えば、
・高い場所の掃除、重い荷物の移動など、自分では難しい家事
・体調が優れない日の急な買い物やゴミ出し
・病院への送迎や、薬の受け取り
・入院中の着替えや日用品の補充
これらの一つひとつは些細ですが、外部の家事代行や付き添いサービスに依頼すると、時間単位で費用が発生します。ちょっとしたサポートにもお金がかかるため、想定外の支出が増える傾向にあります。
身近な人との“ゆるいつながり”が、安心を生む
年齢を重ねると、誰にでも体の不調や生活の不便は出てくるものです。そんなとき、頼れる人がまったくいない状態は、心細さだけでなく、思わぬ出費にもつながります。だからこそ、無理のない範囲で人と関わる「ゆるいつながり」を持つことが、老後の安心の1つになります。例えば、近所であいさつを交わす、郵便配達員やスーパーのスタッフと軽く言葉を交わすだけでも「見守られている」という安心感が生まれます。
また、地域包括支援センターや自治体が行う「サロン」「健康体操」「ボランティア講座」などに参加すれば、同年代の人と自然に出会えるきっかけにも。最近では「地域食堂」や「コミュニティカフェ」など、誰でも立ち寄れる場も増えています。
無理に友達をつくる必要はありません。ほんの少しのつながりが、万一のときに助け合える“安心の種”になるでしょう。
参考:
家計調査報告 家計収支編 2024年 平均結果の概要(総務省)
ニチイライフ:プラン・料金(株式会社ニチイ学館)
KAJITAKU:掃除代行サービス(アクティア株式会社)








