そうした人たちに共通するのは、“お金で得た経験”を大切にしてきたということ。
今回は、「貯めることを重視した人」と「経験にお金を使ってきた人」それぞれの強みや学びを見つめながら、老後をより豊かにする“お金との付き合い方”を考えてみましょう。
計画的に貯めた人の強みと課題
若い頃からコツコツ貯蓄を重ね、ライフプランに沿って将来を見据えてきた人には、「計画を立て、実行する力」があります。住宅・教育・老後といった大きな出費を見通し、堅実に準備してきた点は大きな強みです。一方で、長年「節約を続ける」ことが身についた人ほど、いざ自由にお金を使う段階になると戸惑うこともあります。
「お金を減らすのが怖い」「もったいない気がして楽しめない」と感じてしまう……。そんな心のブレーキが、せっかくの老後を窮屈にしてしまうこともあるでしょう。
老後資金は“守るため”だけでなく、“自分の暮らしを彩るため”のもの。これまでの計画力を「安心して楽しむ力」に変えていくためには、自分にとっての“好き”や“心地よさ”をもう一度見つめ直すことが大切です。
例えば、
●過去の「楽しかったこと」を思い出す
子どもが小さかった頃の家族旅行、学生時代の趣味、仲良しの友人との推し活など。記憶の中の“楽しかった瞬間”は、今の自分が求める心の充足を映しています。
●「今できる小さな楽しみ」を書き出す
「週に一度カフェで本を読む」「近場の温泉へ日帰り」「家庭菜園を始める」など、身近に叶えられる心地よい時間を探してみましょう。
●「お金を使う目的」を決める
「体験のため」「人と過ごすため」「健康を守るため」など、使う意図を明確にすれば、支出への迷いが減り、満足度が高まります。
貯めてきたお金は、人生を豊かに彩るためのもの。「減らす怖さ」より、「生かす喜び」へ。これまで培った計画性を、今度は“心を満たす投資”へと転換していきましょう。
経験にお金を使ってきた人の強みと注意点
一方で、「お金より経験を優先してきた」タイプの人は、趣味や旅行、人付き合いを通じて、人生の豊かさを感じながら歩んできた人が多いのではないでしょうか。こうした人の強みは、好奇心と行動力にあります。新しいことにも積極的で、変化の多い時代にも柔軟に対応できる。人とのつながりも広く、老後の孤立を防ぐ“つながりの資産”を自然と築いている点も、大きな魅力です。
ただ、リタイア期が近づくと、「もう少しお金の計画をしておけばよかったかも」と感じることもあります。そんなときは、これまでの経験を否定せず、むしろそこから見えてきた“自分らしさ”を軸に、暮らし方とお金の使い方を整えていくことが大切です。
ただ、家計を縮小するのではなく、「必要性にあわせて絞る」。好きなことを選び、深めていくことで、楽しみを続けながら家計にも余裕が生まれます。具体的には、次のようなステップを意識してみましょう。
●好きの優先順位を2~3つに絞る
「月1回の映画」「年1回の旅行」「週末のガーデニング」など、上位3つに“楽しみ予算”を割り当ててみましょう。出費が分散せず、満足度の高い時間を過ごせます。
●固定費は“コツコツ見直し”
通信費・保険料・電気代・サブスクリプションの定額支払いなどの毎月の固定費は一度整えると長く効果が続きます。使っていない契約を整理するだけで、月数千円~1万円程度の余裕が生まれることも。浮いたお金を“楽しみ費”に回せば、節約が我慢ではなく喜びに変わります。
●お金の流れを“見える化”する
1カ月だけでも支出を記録し、「食費」「趣味」「交際費」「交通費」などに色分けしてみましょう。
また、口座も「入金用」「支払い用」「貯める用」に分けておくと、お金の出入りが整理され、使い過ぎを防げます。
●得意分野を小さく仕事にする
これまで培ったスキルや好きなことを生かし、週2~3日のパートや、経験を発信するライター業など、小さく収入を得る道を探してみましょう。月数万円の“楽しみ予算”が自力で生み出せるようになると、気持ちにも余裕が生まれます。
●年に一度は“支出の棚卸し”を
定期的に「やめる」「続ける」「深める」を点検する時間を持ちましょう。年に一度の見直しが、ムダを抑え、満足度の高いお金の使い方を保つ秘訣(ひけつ)です。
これまでの行動力を生かしながら、好きなことを選び、固定費を整え、少し稼ぐ。そのバランス感覚を磨き、楽しみを手放さずにお金の安心を積み重ねましょう。








