支援額の平均や分布を見ると、家庭ごとに多様な実態が浮かび上がります。親への仕送りをする際は、条件を満たせば扶養控除を活用して節税につなげることも可能です。
今回は、最新の調査データをもとに、仕送りの実態と扶養控除の仕組みについて整理します。
親への仕送りの実態は?
厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によると、親へ定期的に仕送りをしている世帯は全体の「2.1%」にとどまります。この「2.1%」には「親への仕送りのみ」と「親・子の両方への仕送りをしている世帯」が含まれています(※注1)。世代別の割合は以下のとおりです。【親に仕送りしている世帯の割合】
・29歳以下:2.8%
・30~39歳未満:2.7%
・40~49歳未満:3.2%
・50~59歳未満:3.8%
・60~69歳未満:2.6%
・70歳以上:0.3%
50~59歳が3.8%と全体のうちで一番高く、次いで40~49歳の3.2%と続きます。子育て真っただ中~定年前の働き盛りの年代が中心になっていることが分かります。
※注1:「親への仕送りあり世帯」は「親のみ」+「親と子両方」への仕送りを含む。記事で用いた2.1%はこの定義に基づく割合。
●平均額と金額帯の分布
仕送り額の平均は月約5万6000円で、金額帯別の内訳を見ると、以下の通りです(※注2、親への仕送りのみ世帯ベース)。
【仕送り額の平均と割合】
・2万円未満:12.2%
・2万~4万円未満:29.9%
・4万~6万円未満:20.4%
・6万~8万円未満:6.3%
・8万~10万円未満:4.0%
・10万円以上:6.3%
最も多いのは月2万~4万円未満で、全体の約3割を占めています。日常的な生活費の補填(ほてん)といった、現実的で無理のない金額が主流といえるでしょう。
一方で、月10万円以上を仕送りしている世帯も6%程度存在しています。医療費や介護費など、特別な事情を抱えているケースが想定されます。つまり、仕送り額は少額から高額まで幅広いですが、全体としては「継続できる範囲で支える」姿勢が中心といえるでしょう。
※注2:「仕送り額の分布」は「親への仕送りのみの世帯(1047千世帯)」を母数とした数値。
扶養控除を活用して節税する方法
親に仕送りをしている場合、一定の条件を満たせば扶養控除を活用でき、節税につながります。控除額は以下の通りです。・69歳以下の親:38万円の控除
・70歳以上の親:48万円の控除(別居)/58万円の控除(同居)
例えば、所得税の場合、70歳以上の親を扶養に入れた場合、所得税率10%の人は年間で4万8000円(48万円×10%)、20%の人は年間で9万6000円(48万円×20%)の節税効果が見込めます。
参照:No.1180 扶養控除|国税庁
扶養控除の要件と注意点
ただし、仕送りをしているからといって誰でも控除を受けられるわけではありません。親を扶養控除の対象として申告するには、次の3つの条件全てを満たす必要があります。【所得税法上の条件】
・親の合計所得金額が48万円以下であること
親が給与収入のみの場合は103万円以下、年金収入のみなら65歳未満で108万円以下、65歳以上で158万円以下であれば対象になります。
・親が青色申告者の事業専従者として給与をもらっていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
青色申告者・白色申告者とは、個人事業主やフリーランスなどで確定申告を行う事業者のことをいいます。
・親と「生計を一」にしていること
同居していなくても仕送りを継続的に行い、生活費や医療費などを負担していれば「生計を一にしている」と認められます。ただし、単発的な援助では対象になりません。
注意しておきたいポイント
親を扶養控除に入れるときは、以下の4つに注意しましょう。①複数の子どもが親に仕送りしている場合、扶養控除を受けられるのは原則として1人のみです。兄弟間で事前に相談しておきましょう。
②仕送りが生活費や介護費用であれば贈与税は原則非課税ですが、多額の現金を一括で渡すと贈与とみなされる場合があります。
③控除額以上の仕送りをしても、控除は上限までしか認められません。例えば、月10万円仕送りしていても、控除は最大48万円です。
④仕送りの事実を証明できることが大切です。銀行振込の明細や送金記録があると、税務署に認められやすくなります。現金手渡しで記録が残らない場合、税務署に認められない可能性があります。