「もう解約したい」「本当に必要なのだろうか」と悩む人もいるでしょう。今回は内閣府が発表した「令和7年版 高齢社会白書」から、シニアの方々の保険の加入率の実態を見てみましょう。
生命保険の加入率は5割超。2019年度の調査よりも保険の加入率が上昇
調査では、60歳以上の男女2188人に「老後に備えた民間保険等の加入状況」を尋ねています。以下がその結果です。※複数回答【60歳以上の保険加入ランキング】
・1位:生命保険……56.0%
・2位:病気やけがのための保険……50.7%
・3位:個人年金……19.7%
・4位:介護のための保険……13.3%
・5位:企業年金……13.0%
●老後に備えた民間保険等の加入状況(前回調査との比較) 最も加入率が高かったのは「生命保険」で56.0%、次いで「病気やけがのための保険」が50.7%となり、この2つはいずれも半数を超えています。
また、前回(2019年度)の調査結果と比べると、生命保険は48.3%から56.0%へと「7.7ポイント」増加。病気やけがのための保険は29.3%から50.7%へと、実に「21.4ポイント」も上昇しています。
一方で「いずれも加入していない」と回答した人は、36.2%から17.2%へと「19ポイント」減少。
これらの結果から、シニア世代の間では「老後のリスクに備えて保険に加入しておこう」という意識が、以前よりも一層強まっていることが明らかになっています。
60代後半が保険加入に最も積極的、年代が上がると低下傾向
次は、シニアの年代や性別ごとの加入状況を見てみましょう。●老後に備えた民間保険等の加入状況(性・年代別、ひとり暮らしとそれ以外の比較) 最も積極的に生命保険へ加入しているのは60代です。具体的には、男性(60~64歳)の加入率は「63.9%」、女性(65~69歳)は「67.9%」と、全体平均の56.0%を大きく上回っています。
同様に「病気やけがのための保険」でも、男性(65~69歳)が「59.5%」、女性(65~69歳)が「67.5%」と高い割合を示しており、60代後半は老後の備えにおいて病気やけがのための保険の必要性を感じていることがうかがえます。
一方で、年齢が上がるにつれて「いずれも加入していない」と答える割合が増えていきます。65~69歳では男性が「10.9%」・女性が「8.0%」と低い水準にとどまりますが、85歳以上になると男性「34.4%」、女性「39.7%」と3~4倍に増加します。
この背景には、年齢とともに保険料の負担が重くなることや、医療保険に対する必要度の変化があると考えられます。
厚生労働省の「生涯医療費(令和4年度推計)」に関するデータによれば、医療費は75~79歳をピークに、80代後半以降は徐々に減少する傾向があります。これは病気が減るのではなく、体力や判断力の低下によって積極的な治療を受けにくくなることが要因とされています。こうした現実が、医療保険の必要性や加入継続に影響を与えている可能性があります。
また生命保険については、終身型を若い頃から持っていれば継続して保有する人も多いでしょう。しかし定期型の場合、80歳以降は更新や新規加入ができないケースが一般的です。結果として、高齢になるほど生命保険の加入率が下がる一因になっていると考えられます。
まとめ
今回の調査結果からは、シニア世代の保険加入率が前回よりも大幅に上昇しているという実態が明らかになりました。一方で、年齢が高くなるほど「保険に加入していない」割合も増えており、保険料負担や加入の必要性に対する考え方は、年代ごとに変化することも分かります。つまり「老後の備え」といっても一括りにはできず、ライフステージや家族構成、健康状態に応じて、どの備えが自分にとって本当に必要なのかを見極める姿勢が求められるといえるでしょう。