
2028年度から大きく改正される「遺族基礎年金」。どう変わる?(画像出典:PIXTA)
現行制度の遺族基礎年金とは?
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格者が死亡した際に、その人に生計を維持されていた以下の遺族に支給される制度です。「18歳到達年度の末日まで(障害等級1級または2級の場合は20歳まで)の子どものある配偶者」
「18歳到達年度の末日まで(同上)である子ども本人」
このうち、子どもとその親(配偶者)は同順位の受給権者とされていますが、実際には多くの場合、親に年金が支給され、子どもは「受給権を持ちながら支給停止」となる状況が続いています。
現行の遺族基礎年金制度の問題点とは?なぜ子どもへの支給が止まるのか?
子ども本人が遺族基礎年金の受給資格を持っていても、以下のような理由で「支給停止」となるケースがあります。・親が再婚した場合:親が年金の受給資格を失っても、子どもが「親と生計を同じくしている」とみなされ、遺族基礎年金は支給停止のまま。
・世帯構成の変更:住民票の世帯分離などにより養育実態が不明とされると、年金継続のため再審査が必要になる。
・高収入の親:親(死亡者の配偶者)の年収が850万円を超えると年金請求できず、子どもも同居しているため支給停止。子どもには遺族厚生年金※のみ支給される。
※遺族厚生年金は厚生年金加入者が亡くなった場合に支給される別制度で、遺族基礎年金とは別に扱われます。
・養子縁組:子どもが親族(祖父母、伯父・叔母など)の養子になった場合、「生計を同じくしている」とされ、年金は停止もしくは失権。
・再婚や離婚による養育者の変更:再婚相手による扶養、離婚した元配偶者に引き取られるなどのケースも同様。
これらはいずれも「子どもには責任のない家庭の事情」によって、生活保障が断たれてしまう深刻な課題を抱えています。
子どもの生活保障をより安定させるため、遺族基礎年金の支給停止要件を緩和・見直しすることを主眼とした年金法改正が検討されています。
【2028年度から】子どもへの遺族基礎年金の支給要件の緩和とその内容とは
厚生労働省は、2028年度から、以下のように子ども本人への遺族基礎年金の支給を明確化・拡充する方向で法改正を進めています。■支給停止の解除例
親が再婚して失権した場合:子どもに支給が再開される。
祖父母の養子になった場合:これまでは支給停止だったが、今後は子ども本人に支給される。
離婚した元配偶者に引き取られた場合:子ども本人への支給が可能に。
親の高収入で親が請求不可の場合:子ども本人が直接請求・受給可能に。
■子どもへの加算額の増額
子どものいる配偶者に支給される加算額も見直されます。改正後の加算額は以下になります。
【現行(2025年度)】
第1子・第2子:各23万9300円
第3子以降:7万9800円
↓
【改正後(2028年度~)】
子ども1人当たり一律:28万1700円(人数に応じて)
まとめ
今回の遺族基礎年金の改正のメリットをまとめると以下のようになります。・子ども自身への直接支給が可能に
親の収入や再婚といった事情に左右されず、子ども本人が進学や生活費に使いやすくなります。
・多様な家族形態に対応
祖父母や再婚相手が養育するケース、離婚後の引き取りなど、多様な家庭に配慮した制度になります。
・多子世帯への支援強化
第3子以降の加算増額により、死別した1人親家庭の経済的負担が軽減されます。
遺族基礎年金の改正は、「子どもの生活保障」に焦点をあて、家庭の事情に関係なく子どもが支給を受けられる制度設計へと変化します。特に1人親世帯や多子世帯にとっては、今後の生活の安定と進学支援に大きく寄与する改正となるでしょう。
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