労務管理

“有休”を使うのは当然の権利だと思っているのですが、それでも「繁忙期」は避けるべきですか?

会社で働く人の権利である「有休」ですが、そこにはさまざまな“モヤモヤ”が横たわっているようです。今回は、「繁忙期の有休取得」に関するお悩みについて、社会保険労務士の小西道代が回答します。

小西 道代

執筆者:小西 道代

労務管理ガイド

繁忙期に有休を取得するのは避けたほうがいい?

繁忙期に有休を取得するのは避けたほうがいい?

心身の疲れをリフレッシュし仕事の生産性を上げるのに役立つ「有休」。ただ、会社内の暗黙の了解による“有休マナー”なるものによって、モヤモヤしている人も少なくないようです。今回はAll About編集部に寄せられた有休のお悩みについて、社会保険労務士の小西道代が回答します。

繁忙期に有休を取るのは避けるべきですか?

【今回のお悩み】
有休を使うのは当然の権利だと思うので、どのタイミングだろうと取って良いと私自身は思っているのですが、それでも繁忙期は避けるべきですか。もし繁忙期に有休を取得するなら事前に了承を得たほうがいいですか(20代女性/栃木県在住)。

確かに、有休は労働者の権利だけれど

【回答】
確かに、有休は労働者の権利です。休暇を取って心身をリフレッシュし、健康に働き続けてほしいという目的で労働者に認められているものです。

しかし一方では、労働者を雇用する会社側の立場もあります。会社には、継続的に利益を生み出し、社会の中で存続していくことが求められています。会社は事業計画や人員計画に沿ってしっかり運営されているところもあれば、常に十分な人員を確保できるとは限らず、必要な人数ギリギリで、なんとか日々の業務をこなしている会社も少なくありません。

納期直前のプロジェクトが佳境だったり、重要な顧客との契約が進行中だったりするといった場合、急に休まれると業務に支障が出ることも考えられます。このような場合を想定して、会社には「時季変更権」という権利が与えられています。時季変更権とは、事業の正常な運営を妨げる場合に会社が有休取得日を変更できるというもの。

これは、法律上、労働者と会社の両方に、それぞれの事情を踏まえた権利が用意されており、双方が協力して業務への影響を最小限に抑えつつ、有給休暇の取得を進めていこうとするものです。どのような場合に会社が「時季変更権」を行使できるかについては、具体的な状況によって判断がされるため、裁判例を見ていくしかありませんが、単に「忙しいから」という理由だけでは不十分です。

繁忙期に有休を取るときに考えたい

「繁忙期は避けるべきですか」というご質問に対しては、繁忙期の中であなたが休むことによる影響を考えてみてください。代わりの人員がいるのか? 事前に準備をしておけば間に合うのか? あなたしか分からない業務はないか?など、会社の事業に支障を来すほどの影響がなければ、会社は時季変更権を行使することはできず、あなたは有休を取得することができます。

とはいえ、事業に影響が出そうだと分かっていても、どうしても繁忙期に有休を取得せざるを得ない場合があるかもしれません。

そういったときに頼れるのが、一緒に仕事をする周りの仲間です。日ごろから業務内容の見える化、共有ができていれば、繁忙期であってもサポートに入ってもらえますし、休暇前にしっかりと準備をして引継ぎを行うことで、周りへの影響を最小限にすることができ、上司の了承も得やすくなるとともに、休暇から戻ってきたときの居心地の悪さも軽減させることができるでしょう。

誰にでも予想外の状況は起こり得ますし、過度に申し訳なさを感じる必要はありませんが、他の人が繁忙期に有休を取得したときに積極的にフォローするなど、仲間と協力し合って「有休を取得しやすい環境」を作っていきたいですね。

<調査概要>
仕事で有休を取得する際のマナーに関する疑問
調査方法:インターネットアンケート
調査期間:2025年1月28~29日
調査対象:全国10~70代の男女100人
※回答者のコメントは原文ママ
【編集部おすすめの購入サイト】
Amazonで労務管理関連の書籍をチェック!楽天市場で労務管理関連の書籍をチェック!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます