
気分の浮き沈みが激しくなってしまう双極性障害。主な症状と対処法は?
気分の浮き沈みは誰にでもあるものですが、あまりに変動が大き過ぎる場合は治療が必要な心の病気の可能性があります。双極性障害とは何か、分かりやすく解説します。
双極性障害とは何か? 主な症状と問題点
双極性障害とは、依然は「躁うつ病」と呼ばれていた心の病気の1つです。「うつ病」とは全く異なる病気であると考えられるようになったことから、名称が変わりました。最近では「双極症」と呼ばれることもあります。双極性障害は、気分が上がり過ぎる「躁」の状態と、うつの状態を交互に繰り返す病気です。気分が上がる状態なら問題ないと思われるかもしれませんが、実際には違います。躁状態のときには以下のような症状が現れやすくなり、日常生活でトラブルを起こしてしまうことも珍しくありません。
- 気分が高揚し、楽観的になる
- 頭の回転が速くなる一方、考えがまとまりにくくなる
- 多弁・多動状態になる
- 判断力が乏しくなり、危険を顧みなくなる
- 睡眠時間が少なくても疲れを感じなくなる
- 注意散漫になり、集中力が低下する
- イライラしやすく、怒りっぽくなる
- 悲しい気持ちになり、絶望感が強くなる
- 今まで楽しめていたことに興味を感じなくなる
- 頭の回転が遅くなり、思考力が低下する
- 疲れやすくなる
- 不眠、食欲低下が起こる
- 自責の念が大きくなり、希死念慮や自死願望が生じる
双極性障害の原因は、遺伝要因・社会的要因・環境要因など複合的
双極性障害の原因として、遺伝的な要因が知られています。一卵性双生児の研究によると、片方が双極性障害の場合、もう片方も双極性障害になる確率が85~89%という報告もあります。とはいえ、15%程度の人は発症が見られないため、遺伝要因のみという考えは誤りです。社会的要因、環境的要因が絡んで、複合的な背景で発症すると考えるべきでしょう。特定の病気になりやすい体質の場合、ストレスなどのさまざまな原因が引き金となって、その病気を発症しやすくなると考えてください。
双極性障害の治療法は薬物療法が中心。自然治癒はせず、長期的治療が必要
双極性障害は、治療が必要な病気です。自然治癒は期待できませんが、適切な治療を受けることで気分の変動をコントロールできるようになり、問題なく日常生活を送れるようになります。しかし、双極性障害の治療は長期戦です。精神安定剤などの薬物療法を中心に行い、まずは強い症状を軽減させるための「急性期治療」から始めます。少し落ち着いてからは「継続期治療」を行い、その後は再発を防ぐための「予防的維持」へと進んでいきます。状況に応じて、精神安定剤以外の薬も使用しますので、主治医の指示に従いましょう。例えば、うつ症状が強い時期に抗うつ薬を用いるほか、状況にあわせて非定型抗精神病薬などを用いることもあります。
個々人の状態によりますが、初めての場合、治療期間の目安は急性期治療に3カ月、継続期治療に6~9カ月、予防的維持に1年以上です。
双極性障害は、うつ状態の際は本人も精神的なつらさを感じますが、一定の期間を過ぎて躁状態に変わると、治ったととらえやすく、治療を中断してしまうリスクも伴います。病気について本人と家族をはじめとする周りの人が正しく理解し、継続してケアしていく必要があります。