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バイオエタノールがアマゾンを焼きつくす!?(2ページ目)

ブラジル先住民カヤポ族の長老、ラオーニ氏が18年ぶりに来日しました。かつてスティングと共にワールドツアーを行った人物です。温暖化が叫ばれながらも減少続ける熱帯林。その保護と先住民への支援を訴えます。

筑波 君枝

執筆者:筑波 君枝

ボランティアガイド

「地球にやさしいもの」が森林破壊を深刻にさせている

造成された畑
パッチワークのように切り開かれ、造成されたアマゾンの森。熱帯森林は、このような形で開発され、減少している。©RFJ
アマゾンの森は、なぜ開発されているのでしょうか?

その理由には、木材の伐採、鉱物採掘などがあげられますが、今、深刻な問題として捉えられているのが「地球とからだにやさしいもの」を生産するためです。

たとえば、牛肉。熱帯林の消失の8割が牧場の造成によるものといわれ、ここで造られた肉牛はハンバーガーやペットフードとして先進国へ輸出されてきました。欧米でBSE問題が発生して以降は、感染の危険のないブラジル産牛肉の需要が一層高まり、アマゾンでも肉牛を飼育する牧場の造成がさらに進んでいます。これらの多くも先進国へと輸出されます。

たとえば、大豆。ブラジルは米国に次ぐ世界第2位の大豆供給国です。みそ、醤油、納豆、豆腐など、大豆製品を口にしない日はないほど、日本人の暮らしに欠かせない大豆ですが、自給率はわずか4%。その多くを輸入に頼り、75%がアメリカから、13.5%がブラジルからやってきます。ブラジル産大豆はアメリカや中国にも輸出され、加工食品となって日本にも輸入されていると考えると、その割合は数字に表れているより高いでしょう。その畑を造るためにもアマゾンの森が切り開かれています。

バイオエタノールがアマゾンを潰す?

牧場
造成された後にできた牧場。「安全な食肉」を求める先進国の欲望が、貴重な熱帯森林の破壊しているとしたら……。©RFJ
そして、バイオエタノール。ガソリンの代替燃料として注目されるエタノールの生産国第一位はブラジルです。ブラジルは、100%エタノールで走る車も開発されているほどのエタノール先進国。年間約1500万キロ/リットルのバイオエタノールを生産し、約240万キロ/リットルが先進国に輸出されています。もちろん、日本もその1つです。

日本でも4月27日からエタノール混合ガソリンの試験販売が始まりました。混合するエタノールの比率を現在の上限3%から2020年頃までに10%に引き上げることも検討されています。「エタノールバブル」と揶揄されるほど、世界的な需要が高まる一方では、原料となるサトウキビ畑の栽培面積が広がっています。アマゾンでもサトウキビ畑へと転作される大豆畑が増え、さらに熱帯森林の開発に拍車がかかることも危惧されています。

種の宝庫としてのアマゾン

貯蔵庫
収穫した大豆を貯蔵する貯蔵庫。こうして生産された大豆は私たちの食卓とつながっている。©RFJ
牧場や農場の開発はそこだけにはとどまりません。貯蔵するための倉庫、都市に運ぶための幹線道路などを造るために、ジャングルが切り開かれ、森がどんどん焼かれていきます。森に住む先住民には何も知らされないままに、です。

「アマゾンは酸性土で、決して肥沃な土地ではありません。表土が2~3cm削られただけでも、もとに取り戻すには百年単位での時間がかかるような土地なのです。それなのに、急速なスピードで森が失われています。今、止めないと、手遅れになってしまうかもしれません。」(南さん)

アマゾン川流域は、熱帯林が「地球の肺」として重要なだけではなく、生物学的にも希有な地域です。氷河期にも緑が残り、種の避難場所ともいわれ、生物学的にも貴重な遺伝子資源の宝庫として多種多様な生物が生息しています。森が開発され、絶滅においこまれた種も少なくありません。複雑な生態系をもつアマゾンの熱帯林は、一種が絶滅すると生態系全体に影響を及ぼすことになってしまうのです。

次ページでは、ラオーニ氏の訴えと、私たちができることを考えます。
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