傷ついてばかりはいられない!
事務局には喫茶スペースのあるパン屋さんも併設されています。ニュースタートのスタッフが運営していますが、引きこもりだった人も職業訓練として働いています。 |
それだけ拒絶されても、めげたり、傷ついたりしないのでしょうか。
小原:
「どうしてそういうことを言うの?」と落ち込むことはありますし、傷つくこともあります。でも、それで辞めようとは思わないんです。「受け入れてもらえないかもしれないけれど、一緒に何かをやっていく可能性があるかもしれない。あるなら、それは何かを見つけてみたい」という気持ちが湧いてきます。
お互いのことが全くわからないのに、いきなり拒絶されることが理解できないんですよ。話をして「やっぱりあなたとは肌が合わない」といわれるのならわかるけど、何もないのに拒絶されるのは「どうして?」と思うんです。だから続けられたのかもしれません。
傷つくけれども、そこで止まってはいられない。どうやってコミュニケーションをするかを模索するのが私たちの仕事で、それがスローコミュニケーションだと思います。
心を開かせる人につないでいくレンタルお姉さん
若者寮の台所。入寮している人たちはここで自分たちの食事を作っています。 |
レンタルお姉さんは、訪問する相手にとってどんな存在なのでしょうか? 心が開ける友だちですか?
小原:
友だちではありません。また、心を開かせるのではなく、心を開く人につなぐパイプの役割を私たちがしているんです。レンタルには「ご近所のお姉さん、お兄さん代わりに人材を派遣しますよ」という意味があります。近所のお節介なお姉さん、お兄さんが「元気?」と気軽に、訪ねていくといった感じでしょうか。
だって、突然、誰かが訪ねてきて「私は友だちよ。よろしくね」というのはあり得ませんよね。いきなり、新しい場所に行くのは大変だから、私たちが紹介しますという役割です。つないだ先で、友だちをつくればいいと思うんです。
ガイド:
どういった場所につないでいくのでしょうか。
小原:
ニュースタートの若者寮につなぐ人もいますし、体験入寮し、いろいろなことを経験しながら自分の居場所を探す人もいます。また、学校などの別の場に居場所を見つける人もいますので、こちらも十人十色ですね。
何年も動けなかった人を、社会につなぐまでの過程で、いろいろなことがあります。人に見られたくないことまで見てしまいますから、レンタルお姉さんは、相手にとってはあまりありがたい存在ではないことも多いんです。若者寮に入っている人と顔を合わせることもありますが、担当したレンタルお姉さんを「アイツだけは許せない」と言っている人もいるんですよ。
でも、以前、ものすごく落ち込んでいたときに、私のことを「許せない」と言っていた人がさりげなく気を使ってくれたことがあったんです。言葉はなくても気持ちや優しさが伝わってきて、ジーンときてしまいました。この仕事をしていてよかったなとしみじみ思いました。人に傷つけられるけど、人に救われる仕事なんですよ。そういった人とのさりげない関係があるからこそ、続けられてきたのだと思います。
人が好きなら誰でもできる仕事です
ガイド:お聞きしていると、本当に大変そうな仕事に思えますね。
小原:
話だけでは、きつそうですし、特異な人でないとできないと思われるかもしれません。でも、知識がなくても、人が好きなら関われる仕事です。それと、上から見て「可愛そうな人たち」という気持ちを持っていなければできると思います。
哀れむような気持ちを持って接するとすぐ見抜かれてしまうでしょう。「おまえに何がわかるんだ」と。所詮、他人と他人なので、普通にわかりあうことも難しいのに、「かわいそうに」と思われれば、誰でもカチンと来ますよね。だから、人と対等に関わることができる人なら、誰でもできる仕事だと思いますよ。
レンタルお姉さん、お兄さんが重ねるていねいなコミュニケーションは、少し面倒くさく、でも、人間関係を築く上で、当たり前の手法であるように思えます。その当たり前を行うことが、少し特別になってしまっていることに、問題の本質があるような気がしました。
小原さんたちレンタルお姉さんは、活動をしながら、どんな風景が見えているのでしょうか。続きは、後編「家族に新風を吹き込むレンタルお姉さん」
へ! 家族のこと、そして社会について、ニートや引きこもりの背景に何があるかをおうかがいしています。
【関連リンク】
・リンク集「教育、文化活動に参加したい」 ……子どもと関わる活動は他にもいろいろあります。
・ニュースタート事務局……活動の理念は、家族をひらく。ニートや引きこもりの若者たちの再出発を応援しています。
・レンタルお姉さん(訪問部隊)Blog……レンタルお姉さん、お兄さんの本音がのぞけます。
・ドラマ スロースタート……レンタルお姉さんをモデルにしたドラマ。水野美紀さんの好演が光ります。
【ガイドから】
・ボランティアガイドのメルマガのご登録はお済みですか?こちらからご登録してくださいね。
・前回記事は「プチボランティアしてみませんか アジアの子どもたちに絵本を贈ろう!」です。親子で楽しくおうちでできるボランティアのご紹介です。