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ニートと社会をつなぐレンタルお姉さん(3ページ目)

ドラマでも話題のレンタルお姉さん。ちょっと意味深な名前ですが、引きこもりやニートと呼ばれる青年たちと社会をつなぐNPOのスタッフの呼び名です。さてさてどんな活動をしているお姉さんなのでしょうか。

筑波 君枝

執筆者:筑波 君枝

ボランティアガイド

物を置いていくことは「また来るよ」の意思表示

CDや漫画は分野を問わずに持っているという小原さん。その数は100を超えるのだとか。また、「ドラマ好きの人がいたら共通の話題になるから」と、新ドラマの初回はすべてビデオに撮ってチェックしているそうです。
ガイド:
反応のない相手に、具体的にどのように働きかけるのでしょうか。
小原:
たとえば、物を置いていくという方法があります。CDや漫画などを持っていって、帰り際に、「じゃ、これ、廊下に置いていくね」と置いて帰ってくるんです。自己紹介を兼ねていますし、「大切な物を貸すのだから、私は敵じゃないよ」を伝える意味もあります。なにより、物を置いていくことは、それを取りに行かないといけないから「また来るね」という意志表示になるのです。

「やれやれ、やっとあの女、帰ったか」と、相手がドアを出たら、物が置いてある。それは、いつか取りにくるという無言の合図で、必然的に私がまた行くことのプレッシャーになるんです。「アイツ、また来るんだ……。明日だろうか、明後日だろうか」とドキドキしながら待つことになりますから。

ガイド:
反応はありますか?
小原:
悪かれ、悪かれ、ありますよ(笑)。

ガイド:
良かれ、悪かれではないんですね(笑)。
小原:
ものすごくうるさいハードロックのCDを置いてきて、「こういうの大嫌いだ」と突っ返されたら、悪い結果なんですが、反応が返ってきたという意味では「よっしゃ!」と思うんです。それまで無反応だった人が、たとえネガティブな反応でも示してくれたことは、私が投げたボールを何らかの形で返してくれたことだから、一歩前進しているんだと思います。

拒絶の中にあるわずかな反応を見逃さない

扉
何年も社会との関わりを拒み、部屋に閉じこもってきた人と、どうやったらコミュニケーションを取ることができるか。レンタル活動はそれを模索し続けています。©EyesArt, Inc
ガイド:
ほんのわずかでも相手の変化は見逃さないのですね。
小原:
こちらの言葉に、イヤそうに眉間を寄せているといった表情でも、心からイヤなのか、本当は笑いたいけど「コイツの前で笑ってはいけない」と、こらえているのかというのは見ていますよ。そこに次にどう動けばいいかのヒントがありますから。

ボールをどう投げれば、届くか。投げ方によって、人によって届き方が違うことを1年、2年と活動するうちに気づきました。ニートや引きこもりの人たちからコミュニケーションとは何かを教えてもらったような気がします。

ガイド:
どんな手段を取っていけばいいかは、その場その場で考えながら動いているのですね。
小原:
レンタルお姉さんになって、十人十色という言葉の意味を初めて知った気がします。A君に投げて届いたボールがB君にも届くとは限らない。でもC君にはA君と同じボールが半分届いた。じゃ何が足りないのだろう。B君に届いたボールならどうかと投げてみると、半分だけ届いた。けれども、D君にはどれもあてはまらないので、別の引き出しから持ってきたものをあてはめたら、「鍵が開いた!」ということの繰り返しです。同じことをして、同じように反応する人なんて1人もいません。

それほどまでに拒絶されても、向き合おうとするのはなぜ? 引きこもる人にとってレンタルお姉さんってどんな存在なのでしょうか。
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