レンタルお姉さんは特別な人?
レンタルお姉さんの小原由子(よしこ)さん。現在までに80名を超える人たちと接し、支援してきました。 |
ガイド:
小原さんはなぜレンタルお姉さんの仕事を始めたのでしょうか。
小原:
気がついたらレンタルお姉さんになっていました(笑)。「レンタルお姉さんになりたい」と言ったこともないですし、「今日からレンタルお姉さんになってください」と言われた覚えもないんです。
以前の仕事は、福祉作業所の生活指導員でした。20歳そこそこでも肩書きは生活指導員。自分は立派じゃないし、何もできない。けれども指導員といわれてしまうことにもどかしさを感じながら働くうちに、だんだん精神的にも体力的にもきつくなってしまったんです。
仕事を辞め、バイトをしていたときに、ニュースタート代表がある新聞で「若者と一緒に皆で作り上げて行く場所を目指す」と語っていたのを読んだんです。それを読んで「ああすごくいいな」と思いました。「皆で、一緒に作り上げていく」という言葉が心にぽーんと入ってきたんです。
私も人が大好きなので、何ができるかわからないけど、たくさんの人と一緒に何か作り上げたい、やり遂げてみたいと思い、飛び込みました。
ガイド:
カウンセリングを勉強したとか、特定の資格を持っていたというわけではないんですね。
小原:
学生時代、福祉の勉強をしましたが、私が学んだ福祉とはあきらかに違いましたから、ゼロからのスタートでした。「こんなこともあるんだ」、「こういうときはどうしたらいいんだろう」とその都度、考えながら、突っ走ってきた感じです。
最初は、何回か他の方の訪問活動に付き添っていましたが、だんだん1人でいくようになり、1ヵ月後に10人以上担当し、いつの間にかレンタルお姉さんと呼ばれていたんですよ(笑)。
9割9分、拒絶から始まるコミュニケーション
携帯電話やインターネットで人と瞬時につながる便利な社会は、本当に居心地がいいのでしょうか? ニュースタートの活動は、そんな問いかけを投げかけているかもしれません。 |
具体的にどのような活動をしているのでしょうか
小原:
家族からの依頼を受け、まずは自己紹介をかねた手紙を書くことから始めます。その後、電話で訪問の約束をして、会いに行くんです。
電話しても電話口に出ないことも多いので、その場合は、もう1度手紙を書いたり、ハガキを出したりします。封書は開けずに放っておかれてしまうので、ハガキで「○日に行きますね」と書いて送って、目の届くところに置いてもらったりするんです。
突然の訪問は、相手を戸惑わせてしまいますから、反応がないからと、一方的に訪問することは、できるだけしたくないのです。半年、1年と連絡を取っても無反応なときは「近くまで寄ったから」と訪問することがありますが、基本は、コミュニケーションを取りつつ、相手が動くのを待つことだと思っています。
ガイド:
訪問しても、すんなり会えるわけではないんですよね。
小原:
はい。9割9分拒絶されます(笑)。何年も自分時間を過ごしている人のドアをノックするのは、相手のお城に土足で踏み込むような行為ですから、ウエルカムの人は皆無です。
でも、皆、引きこもっている状態がいいと思ってもいません。「どうにかしなくてはならない」という焦りや「人の手を借りないで動き出したい」というプライドも持っているんです。そこに会ったことのない人間がやってくれば、なおさら拒絶されます。
だからといって、無理に部屋のドアをこじあけることはしたくないんです。もちろん、いろいろ働きかけ、その都度相手の反応を探っていきますけれど、自分であけるのを待つことが基本。それがスローコミュニケーションだと思っています。
次ページでは、引きこもっている人に、具体的にどのような働きかけをしているかをうかがいました。