All About編集部が全国10~70代の男女100人を対象に実施した「年間行事やイベントのマナーや由来に関する素朴な疑問」(期間:2025年1月28~29日)アンケート調査に寄せられた、「卒業式に黒や紺などの地味色を着る意味」についての疑問にお答えします。
Q. なぜ卒業式に「黒や紺の服」を着るのですか?
卒業式はあくまでも「セレモニーのための装い」なので、TPOに合っていることが一番重要です。また主役は子ども達なので、親が目立つべきではありません。場になじみ、周囲に不快感を与えないことが第一優先になります。その理由から「黒や紺などの地味色」の服を着用するのがマストといえます。続いて、「黒」や「紺」という色が持つ意味に触れてみましょう。
■黒とは?
■紺とは?色名の一つ。英名はブラック。一般に「炭のように黒い」「墨のように黒い」という表現をするが、いずれも黒に近い色であって純粋な「黒」ではない。すべての光を完全に吸収できるような黒い物質は存在しないとされている。したがって、色名としての黒は他の色の概念で例えようがなく、黒は黒となってしまう。黒系統の総称としての意味合いが強い。また、黒は無彩色であり、白の対語。(出典:講談社『色名がわかる辞典』)
黒は暗闇のイメージが強い色ですが、重厚感や力強さが感じられ、洗練されたクラシックな配色として昔から冠婚葬祭にも使用されています。また紺は黒よりも柔らかい印象を持ち、上品で清楚(せいそ)、清潔感というイメージがあります。藍染(あいぞめ)の中で最も濃い色で、 わずかに赤みを含んだ濃い青色。英名ではネイビーブルー。また紺よりもさらに濃い、黒色に見えるほどの藍色に褐色(かちいろ)があり、武家の間で「かち=勝ち」の読み方が好まれたため、「褐色威(かちいろおどし)」や「褐色の直垂(ひたたれ)」などの表記が軍記物語などによくみられるほど、武士間の戦いの勝利に縁起が良いとされていました。(出典:「伝統色のいろは」)
Q.「黒や紺などの地味色」以外はマナー違反ですか?
黒や紺以外の色を着てはダメなことはありません。しかし、卒業式を英語で書くと「graduation ceremony」であり、「ceremony」は式という意味ですよね。式に着用する服装は冠婚葬祭にも使用され、黒色は昔から厳かなTPOに用いられてきました。また紺色も、お受験用のスーツやビジネススーツ、卒業式・入学式などの服に多い色。どちらの色もセレモニーという式に着用される色なのです。卒業式は子どもたちの旅立ちの場であり、そして先生や友人達との別れの場です。その意味から明るいカラーよりも、むしろ黒や紺などの地味色が落ちつくのでしょう。
>卒入学式経験者が選んだのは何色?
Q. 卒業式に「着てはいけない服装」はありますか?
子どもが主役で保護者は主役を助ける役、バイプレーヤーです。派手な色や柄物は避けましょう。光沢がありすぎる生地もいけません。カジュアルなファッションもNGです。フォーマルな服装で卒業式に出席する保護者の中に普段と変わらないカジュアルなファッションで行っては浮いてしまいます。スカート丈も、短すぎると肌の露出が多くなるためセレモニーの場に適していません。膝丈くらいが一番きれいに見えます。長すぎるものも重苦しい印象になるので、ふさわしいとはいえません。着崩し、襟抜き、レイヤードなどだらしなく見える服もNGです。
普段のおしゃれなら、トレンドを取り入れたり自分らしさを表現するのが楽しいものですが、卒業式の場合は“自分を出す”のは控えめに。地味すぎず、派手すぎず、目立たず、上品で清楚な装いを目指しましょう。
Q. ストッキングは「黒でなくベージュ系」といわれる理由は?
黒は基本的に弔事に使用するものです。また色付きカラータイツや素足もカジュアルすぎる印象に映るため避けたいもの。卒業式は季節的に寒いので黒タイツやデニール数が大きめのストッキングに頼りたくなりますが、そこはぐっと我慢……肌色で頑張りましょう!
Q.「コサージュ」は絶対に必要ですか?
コサージュは必ず着けるという決まりはありません。■コサージュとは?
コサージュは小さい花束です。子ども達の新たな門出をお祝いする意味で、母親たちがスーツやワンピースなどに付けて喜びの気持ちを伝えること、そして「黒や紺などの地味色」の服に華やかさを出すというのがコサージュの大切な役目です。婦人服の胴部をいう。また肩やウエストなどに飾る生花や造花の花束も同語源。婦人が胸や肩にアクセサリーとしてつける小さい花束を意味する。生花でつくることもあるし、造花の場合もある。(出典:小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』)
コサージュを添えるだけで華やかになりますが、ブローチ、リボンやスカーフ、パールを選んでシンプルにアクセントを加えるなど選択肢はたくさんあります。またインナーをフリルやボウタイブラウスにして襟元を華やかに変えてみる手もあります。