人生の節目となるさまざまな儀式で使用される水引
水引とは和紙を紙縒り（こより）状にし、糊水を引いて乾かして固めた飾りひものこと。日本独特の素材で、人生の節目となるさまざまな儀式で使用されています。
水引の色・結び方・本数には意味がある
水引の色や結び方、本数にはそれぞれ意味があり、贈る目的や贈られる人の状況に合わせて選ぶことが大切です。ここに一例をあげますので、参考にしてみてください。●結婚式のご祝儀
名目：寿、御結婚御祝、御祝
水引の色：紅白、金銀
水引の結び：結び切り
●見舞い
名目：御見舞、祝御全快、御菓子料、御果物料
水引の色：紅白
水引の結び：結び切り
●葬式（香典）
名目：御霊前、御仏前
水引の色：白黒、双銀、黄白
水引の結び：結び切り
●法要（御供物）
名目：御花代、御供物料
水引の色：白黒、黄白
水引の結び：結び切り
結び切りは一度結んだらほどけない結び方なので、結婚・弔事・病気見舞いなど、「二度と繰り返してほしくないこと」に使われます。
●出産祝い・入学祝い・成人祝い・長寿祝い・新築祝い・御餞別
名目：御祝
水引の色：紅白
水引の結び：花結び
花結びは、蝶結びとも呼ばれます。簡単にほどくことができる結び方なので、出産・新築・長寿祝いなど「何度でも繰り返していい」祝い事に使われます。
水引の本数は5本が主流です。「五本結び」には「五穀豊穣」や「五つの幸運をもたらす」、「三本結び」には「幸せが三つ重なる」という意味があります。「七本結び」は「七福神」の象徴で、無限の幸福や繁栄を願う意味も。「十本結び」は「十全」や「万全」といった完全な形を象徴する、非常に縁起のいいものです。
水引の色・結び方・本数については、各地方により習慣・用い方・流派の違いがあり、年齢や相手との関係によっても違いがあります。
水引の歴史
水引の歴史は非常に古く、奈良時代には神職が身につける装飾品として使用されました。平安時代に入ると貴族社会でも水引が用いられるようになり、特に結婚式や祝い事において重要な役割を果たすように。神聖な意味を持つ「結び目」を象徴するものとして、儀式の中で重要な意味を持つようになりました。
室町時代後期になると麻ひもの代わりに紙糸が使用されるようになり、これが現代の水引の原型となりました。
江戸時代に入ると、商業の発展とともに水引がより広く一般社会に普及し、商家や町人の間でも贈答の際に水引を使うことが一般的に。結び方や色の意味にも細かいルールが設けられ、贈り物の内容や相手との関係性によって、使う水引の種類や結び方を変えるようになりました。また、江戸時代中期以降は手工芸としての水引が高度に発展。現在見られるような色とりどりの水引のデザインが生まれました。
明治時代以降、水引は大量生産されるようになり、市販ののし袋も普及。のし袋のデザインも多様化し、用途に応じて種類が増えました。現在のような、種類豊富な祝儀袋・不祝儀袋の形が整ったのです。
このように水引は、神職が身につける装飾品から、一般的に用いられる祝儀や贈答品の一部に変化し、長い歴史を持つ文化的な存在となりました。
近年、冠婚葬祭の形式は変化し、伝統にとらわれない人々も増えています。しかし、水引やのし袋は、日本社会ならではの「お付き合いを円滑にするアイテム」として根付いています。水引の色、結び方、本数などの基本的な考え方をおさえて、贈る気持ちを託してみてくださいね。
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