集めた募金を株取引に?
ニセ募金団体主宰者のあきれた手口
ニセ募金活動は、街角の善意を踏みにじる卑劣な犯罪だ。 |
このグループは、04年10月頃から、大阪の繁華街に突如として出現し、揃いの服を着た若者が、大々的に街頭募金活動を行っていました。でも、その割には募金の使途を聞いても明確な答えが返ってこないなどの不審な点が目立ち、“謎の街頭募金団体”として疑惑が深まっていました。しかも、その活動がマスコミ等で問題視され始めた04年末に、突然、活動を中止し、姿をくらましてしまったのです。
逮捕容疑は職業安定法違反。「道頓堀の喫茶店で時給1000円以上。100人以上の大募集」などと、虚偽の求人広告でアルバイトを雇い、街頭募金を集めさせたというものです。
その後、7月29日には、通行人から約2000万円をだまし取った詐欺容疑で、再逮捕されました。被害者や金額の特定が困難なニセ募金活動への、詐欺容疑の適用は全国初のことです。被害者は、大阪府警が割り出した11人。彼らの被害感情が、不特定多数を代表するものと解釈されました。こうした解釈は刑法上異例だとのことですが、それほど、この事件が悪質かつ目にあまるものだったといえるでしょう。
大阪府警の発表によれば、ニセ募金活動で集めた総額は4000万円にのぼると推測されています。大半が実質的なリーダーだった主宰者の男の株取引に使われた疑いが強いとみられています。なんと、この男、株式投資やソフトウエアの開発、クワガタ育成などの事業に失敗し、大阪地裁から破産宣告を受けており、約1億円もの負債も抱えていたとか。破産宣告の約3カ月後には募金活動を始め、その一方で家族名義で多額の株取引をしていました。その資金が街頭募金で集めたお金のようなのです。
各地で頻発するニセ募金活動
計画的で悪質な手口としかいいようがありませんが、こういったニセ募金活動は、ここ数年、各地で大きな問題となっています。途上国の難民支援、飢餓救済、災害の被災者救援など、名目はさまざまですが、地震や台風など、そのときの注目のニュースに乗じることが多いという特徴もあります。たとえば、2003年に日本テレビの「報道特捜プロジェクト」をはじめ多くのマスコミで取り上げられた国際人文交流協会や、北朝鮮拉致問題解決国民会議という団体。北朝鮮の拉致被害者救援を名目に募金活動を大々的に展開し、問題視されていたことを記憶のかたも多いことでしょう。
国際人文交流協会に不信感を持った「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会全国協議会)」では、2003年3月20日付けでこの団体が集めた募金を一切受け取らないなどの通告文を出したほどです。この種の詐欺が各地で頻発していることがうかがえるでしょう。
次ページではニセ募金活動がほかの団体の活動にどんな悪影響を与えるかについて考えます。