シュタイナー教育の卒業演劇で芝居に目覚める
――坂東さんのキャリアについてもお聞きしたいのですが、ニューヨークで生まれて、北海道育ち。シュタイナー教育(※)で演劇を経験してから芝居に目覚めたそうですが、今の坂東さんのお芝居にシュタイナー教育での演劇はかなり影響を与えているのでしょうか?※ドイツのルドルフ・シュタイナーが提唱した芸術教育
坂東:間違いなく影響を受けていると思います。「卒業演劇」というのがあり、その舞台に立ったことが芝居に目覚めたきっかけです。それまで演劇は嫌いだったんですよ。人前に立って芝居をするなんて恥ずかしいじゃないですか。
でも小学生から高校生までの教育カリキュラムに演劇が入っていて、その教育の集大成が卒業演劇。その舞台で経験したことのない充実感と高揚感を得たんです。恥ずかしさを超えて「これだ!」と思い、自分は絶対に俳優になれると信じて上京しました。 ――まずは卒業演劇で舞台の世界に魅了されたんですね。
坂東:舞台は苦痛と快楽がはっきりしている気がします。僕は本番までの時間はとても苦手。プレッシャーに負けそうになって、セリフが入ってこなくなって、逃げ出したくなります。ただ、震えながらでも舞台に1歩出たら、お客さんと一体化できて、自分を取り囲んでいたすべてのネガティブな感情から解き放たれて、快感に変わる……。その瞬間が最高です。
昨年、『う蝕』という舞台をやったとき、卒業演劇の感動を再び味わうことができました。とても楽しかった。やっぱり俳優・坂東龍汰の本質を作っているのは、シュタイナー教育で学んだ演劇なんだと思います。
――映像とは手応えが違うということですか?
坂東:映画やドラマはまた違うよさがあります。舞台は最初から最後まで一気に展開していきますが、映像作品はシーンごとにカット割りがあるし、物語の順番通りに撮影するわけではない。でもシーンごとにどうしたらよりよくなるか相談できますし、撮影が進むにしたがってステップアップしていく楽しさがあります。
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