退職後の収入が一定基準を超えると減額対象になるのは「老齢厚生年金」
65歳からもらえる老齢年金には、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つがあります。老齢基礎年金は、国民年金や厚生年金保険などに加入して保険料を納めた方が受け取る年金で、加入期間に応じて年金額が計算されます。一方、老齢厚生年金は、厚生年金保険に加入していた人が受け取るもので、給与や加入期間に応じて計算されます。自営業やフリーランスで国民年金にのみ加入していた人は老齢基礎年金のみを受け取れ、会社員として厚生年金に加入していた人は、老齢基礎年金のほかに老齢厚生年金も受け取れます。今回のテーマとなる、65歳以降に収入が一定基準を超えると減額される年金というのは、「老齢厚生年金」です。
老齢厚生年金が減ってしまうのはどんなとき?いくら減額されるの?
60歳以降に厚生年金に加入して働きながら年金を受給する場合、一定基準を超えると老齢厚生年金が支給停止となります。これを「在職老齢年金」といいます。2024年4月以降は、老齢厚生年金の報酬比例部分の月額(基本月額)と給与((その月の標準報酬月額※)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12で計算したもの)の合計が50万円を超えると、以下での計算のとおり老齢厚生年金が毎月、支給停止となってしまいます。
・(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)×1/2
※:標準報酬月額とは、給与や賞与をもとに算出される社会保険料の基準額のことです。
例えば、月10万円の老齢厚生年金と45万円の総報酬月額相当額をもらう方は、
・(10万円+45万円-50万円)×1/2=2万5000円
もともと月額10万円支払われるはずの老齢厚生年金から月額2万5000円が減額され、「7万5000円」が支払われます。
参照:在職老齢年金の計算方法|日本年金機構
老齢厚生年金を支給停止にされることなく働くためには?
年金を減額されずに働くためには、以下の2つの方法が考えられます。●収入と老齢厚生年金の月額を月50万円以下に抑える
年金が減額されるのは、年金額と総報酬月額相当額の合計が月50万円を超えた場合です。例えば、老齢厚生年金が月10万円の場合、総報酬月額相当額の合計を40万円以下に抑えることで支給停止を防ぐことができます。もし収入の合計額が50万円を超えそうな場合は、勤務日数や勤務時間の調整を会社に相談してみましょう。
●厚生年金に加入しない働き方を選ぶ
定年退職後にフリーランスや個人事業主、自営業として働く場合、厚生年金への加入は不要です。また、社会保険に加入しない範囲でパートやアルバイトとして働くことも選択肢の1つです。このような働き方をすることで、年金の減額を避けつつ収入を得ることができます。
自分の働き方や収入のバランスを見直し、無理なく年金を受け取れるよう工夫することが大切です。