一般的に、大企業では手厚い退職金制度が整備されていて、支払われる退職金額も多い一方、中小企業では大企業に比べて制度も充実していないため、退職金額が抑えられる傾向にあります。
今回は、中小企業の退職金が大企業の支給額とどのくらい差があるのかみてみましょう。
中小企業に勤務する人がもらう退職金の相場はいくら?
東京都産業労働局は「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」で、中小企業における学歴別のモデル退職金額を公表しています。この調査は、東京都内の中小企業1012社が対象となっています。対象企業の常用労働者数は、10人以上300人未満。退職金制度は、「制度あり・724社(71.5%)」「制度なし・286社(28.3%)」です。
2022(令和4)年の、定年退職まで勤務した方が受け取ったモデル退職金は次のとおりです。
●中小企業のモデル退職金
【2022(令和4)年】
・高校卒:994万円
・大学卒:1091万8000円
中小企業の退職金は大企業とどのくらい差があるのか?
中小企業のモデル退職金を確認したところで、大企業の退職金とどれくらい差があるのでしょうか。大企業(資本金5億円以上かつ労働者1000人以上の企業が対象)のモデル退職金は、厚生労働省(中央労働委員会)による「2023(令和5)年賃金事情等総合調査」で確認することができます。その結果は次のようになります。
●大企業のモデル退職金
【2023(令和5)年】
・高校卒:2162万5000円
・大学卒:2858万4000円
上述した、東京都産業労働局による中小企業のモデル退職金との差は、以下のとおりです。
【中小企業と大企業のモデル退職金の差】
・高校卒における差:約1169万円
・大学卒における差:約1767万円
これより、大企業と中小企業のモデル退職金を比べると、中小企業に勤める方のほうが約1100万~1700万円も少ないことがわかります。
現状、退職金制度は、多くの企業で導入されていますが、退職金を支払うことは法律で義務づけられているものではありません。実際、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)によれば、調査対象企業1012社のうちの約4分の1を占める286社(28.3%)で「退職金制度なし」という回答です。
中小企業に勤務する人が退職後の経済的安定や充実した生活を実現するためには?
中小企業に勤務する人は、大企業と比較して退職金が少ない可能性が高いことを踏まえ、退職後のキャリアについて計画することが大切です。退職後の経済的安定や充実した生活を実現するには、以下の3つの具体的な取り組みを検討してみてはどうでしょう。●退職金が少ない場合の取り組み1:退職後も働ける道を探す
退職後は、自分の経験やスキルを活かせる仕事を探しましょう。2021(令和3)年4月1日に施行された高年齢者雇用安定法では、「70歳までの就業確保措置」が企業の努力義務として追加されました。これにより、元気なシニアを積極的に採用する企業も徐々に増えてきています。パートタイム、アルバイト、業務委託など自分に合った働き方で、長く働き続けられる方法を考えておきましょう。
●退職金が少ない場合の取り組み2:現役時代からダブルワーク(副業・兼業)を行う
「ダブルワーク(副業・兼業)」を解禁する企業が増えています。就業規則などを確認してダブルワークがOKであれば、定年退職後を見据えて現役世代からダブルワーク(副業・兼業)を始めておきましょう。
現役時代の収入を増やすことも可能ですが、新しいことへのチャレンジをすることで、定年後への足掛かりとなる仕事が見つかる可能性もあります。退職後の生活を安定させるために積極的にチャレンジしましょう。
●退職金が少ない場合の取り組み3:国の税制優遇制度を利用した「自分退職金」や「自分年金」を作る
早い段階から老後資金の積立や資産運用を行い、退職金に依存しない経済基盤を築くことが大切です。
まずは、iDeCo(個人型確定拠出年金)や新NISAなど、国の税制優遇制度を利用した「自分退職金」や「自分年金」作りに取り組みましょう。