火災保険の改定と見直し
また以前は最長36年間の火災保険契約が可能でしたが、2度の改定で現在は最長5年間に短縮されています。さらにこの数年で築年数別の料率区分が導入されました。建物の築年数が一定の年数を経るごとに(築10年、20年など)保険料率のベースが上昇していくかたちになっています。
多くの損保で2024年10月にも火災保険の改定が実施される見込みですが、改定の影響が大きい人ほど何らかの対処が必要な状況です。
火災保険の改定が続く背景
火災保険の改定が頻繁に続く理由は次のとおりです。1つ目は自然災害等の発生を原因とした保険金支払いの増加です。自然災害はコントロールできないため、保険料率だけでなく、長期の火災保険契約も保険会社としてはリスクとなります。2つ目は築年数の経過している物件が増加していることです。建物が古くなると漏電や漏水事故などが起こりやすくなります。他にも台風などの災害時に建物の倒壊リスクが高いことなどがあります。
新築の物件でもやがて古くなっていきますから、その意味では火災保険も、年齢を重ねるごとに保険料がアップする生命保険に近いかたちに少しずつなってきているのです。
また、水災リスクを保険料に反映するために用いられていた水災料率は、これまで地域差などが設けられていませんでしたが、水災リスクが地域によって異なると捉え、そのリスクに応じた料率を反映させるものです。
この10年で火災保険で変わったこと
そもそも火災保険料は、料率がかけられて決まります。火災保険料率は物件の所在地(都道府県)、構造(3区分)、用途(専用住宅、事務所など)などによって変わってきます。この10年で新たに保険料率に影響があった改定のポイントを挙げると以下のようになります。・保険料率の上昇
・契約可能な保険期間の短縮(最長5年)
・築年数別料率の導入
・水災料率の細分化
など。
保険料率は参考純率(保険料(純保険料+付加保険料)のうち保険金の支払いに充てられる純保険料部分)ベースで40%弱上昇しています。契約できる最長保険期間が5年になったことで長期契約の割引のメリットが薄くなり、築年数が古いとより保険料への影響が大きくなりました。
築年数別の料率区分は損保によって異なります。5年、10年刻みの切りのいい数字になっていることが多いため、例えば築20年、25年など切りのいい数字になる際に前年までより火災保険料率のベースが引き上がる可能性があります。また現在数社の損保がネット契約可能な火災保険に算入しています。
さらに保険料率以外にも以下のような要素もここ10年で変わった点としておさえておきましょう。
- 物価上昇に伴う建築費の上昇(物件評価が上がり、契約金額や保険料の上昇に繋がる)
- ネット火災保険の参入
火災保険改定時の見直し方と対処法
具体的な火災保険の見直し方法について考えていきましょう。改定による保険料への影響は個々に変わります。また改定時期の前後にちょうど火災保険の満期を迎える人ばかりではなく、翌年に満期などのケースもあるでしょう。そのため大きく分ければ改定時の対処は2つになります。
- 何もせず火災保険の満期までそのまま
- 改定前に火災保険を見直し
火災保険の改定は損害保険料率算出機構が参考純率の改定をした後、1~2年経たないくらいの期間で実際の商品改定が行われています。2024年10月にも火災保険の改定が行われる見込みですが、損害保険料率算出機構の改定の届出は、2023年6月にでています。つまりこの届出がでた時点で、次の改定が行われる時期はおおよそ予測できます。
そのため届出がでたときの前後に満期になる場合、5年契約にしている人はそのまま5年で契約するのもありですが、あえて1年程度の期間で契約して改定前に改めて5年で契約すれば改定前の保険料で契約できる期間が長くなります。実際には試算した上で検討が必要ですが、保険料の上昇が大きいなら検討の余地はあるでしょう。
【まとめ】火災保険料を節約する方法
最後に火災保険を節約する方法をまとめておきます。前提として火災保険が改定される時期がいつか、自分の火災保険の満期日がいつかを確認することが第一歩です。その上で改定前後で保険料がどのくらい影響を受けるか、できるだけ早期に把握してください。■可能な限り長期契約(最長5年)、一括払い
長期契約の割引は以前ほどではないと言いましたが、自然災害や築年数が保険料改定に影響している以上、たびたび改定が実施され、保険料が上がる流れが今後も大きく変わるようには見えません。そのため、長期契約にすることで、その後改定された場合の影響を避けることができます。
また大して保険料の節約になりませんが、長期一括払いが予算上難しい場合、損保の商品によって長期の年払いや月払いが可能なケースがあります。例えば契約は5年間で、支払いを毎年あるいは毎月支払う方法です。この後に改定がさらにあると考えるなら、その影響を避ける意味では有効な方法です。
■補償の限定、免責金額(自己負担額)の設定
代理店型の損保では、3つから多くて6つのプランを選ぶことになります。自分でウェブサイトなどで申し込む「ダイレクト型」の場合は基本補償をベースにユニットで分かれている補償を自分で選びます。
安易に補償を外すのは危険ですが、必要な補償に絞れば保険料の節約は可能です。また自己負担額を設定すること(10万円など)も1つの方法です。
10万円などは小さい金額ではありませんが、大きな損害時に火災保険と使うと割り切れば保険料を押さえられます。
■加入先の比較
築年数別の料率区分は損保によって必ずしも一律ではありません。築年数が5年、10年単位を跨ぐときには他社と比べてみてください。まだダイレクト型だから必ず安いとは言えませんが、ネット型だと自分で見積もりが作成できます。
具体的には、ソニー損保、ジェイアイ傷害火災保険、セゾン自動車火災保険、SBI損害保険、楽天損保、チューリッヒ保険などがあります。自宅にセキュリティシステムを導入しているならセコム損保なども選択肢に入るでしょう。
契約内容等は各社異なるので、よく比較してください。他にも1年契約なら各種火災共済なども比較の対象に入れておくのもいいでしょう。共済では築年数別の料率は水災リスクの反映などはまだしていません。火災保険と補償内容が異なること、共済同士でも内容や仕組みが異なる点には注意してください。
また、すべての損保が2024年10月から改定すると決められているわけではありません。なかには改定時期が後ろにずれていることもあるので、満期のタイミングによってはそうした損保での契約もありでしょう。
火災保険は昔と違い、加入してずっとそのまま同じ内容で継続という時代ではなくなっています。改定の情報を小まめに収集して保険の見直しなどを実行してください。