中村監督が直々に中条さんへ出演オファー
――この映画は中村和宏監督が長年温めていた物語なのですよね。中条:6年前に書いた脚本をずっと温めていたそうで、監督から直々に出演依頼がありました。最初に脚本を読んだとき、キャラクター1人ひとりに寄り添った、とても愛情深い物語だと思いました。監督のオリジナルストーリーで、監督の原案をもとに西井史子さんと執筆した作品で、それぞれのキャラクターに愛がたっぷり詰まった脚本です。
そんな長い間温めていた脚本に出会うことは貴重ですし、鶴瓶さんや江口さんの出演が決まったというお話を聞いたときはうれしくて。撮影が始まるのが楽しみで仕方がありませんでした。
――監督は尼崎市の出身ですし、キャストも関西の方ですが、現場はどのような感じだったんですか? 映画と同じようににぎやかだったのでしょうか?
中条:そうですね。早希の父の工場で従業員の方と話すシーンがあるのですが、演じているというより、実際に工場に遊びに行って、みんなでお茶してしゃべっているような感覚でした。元アイドルだったという俳優さんがいたので「踊ってや!」と無茶振りしたり(笑)。
高校時代、放課後に友達とフードコートでずっとおしゃべりしていたときの感覚がよみがえってくるようで楽しかったです。
江口さんのぼやきと鶴瓶さんの自由さ
――鶴瓶さん、江口さんとの共演はいかがでしたか?中条:鶴瓶さんは自由な方ですね。カメラが回っていないとお昼寝していたり、お昼ご飯もどこかへ食べに行っていたり。ただ、すごく人を大切にされているので、みんなに愛されていました。常に周囲に気を配っていらっしゃるんです。
商店街のロケ中、通行止めをして撮影をしていたのですが、通れなくて困っている方を鶴瓶さんが見つけて、撮影を中断して通してあげたこともありました。そういう姿を見て、やさしい方だなと。 江口さんは以前、CMでご一緒したことがあり、「いつか芝居で共演したい」と思っていたんです。撮影現場でも以前のイメージのまま、よくぼやいていました(笑)。
より良い作品にしようという意識がとても高く、よく監督と意見を戦わせていたので、ときどき私が間に入って「まあまあ」と言ったり(笑)。なんだか本当に江口さんが優子ちゃんに見えることがあり、かわいらしい、愛おしいという気持ちになっていました。
――この映画は関西の方たちの魅力も描かれていますよね。絶妙な押しの強さは関西人ならではなのでしょうか?
中条:関東にも押しの強い人はいると思いますが、関西人は人との距離感が独特かもしれません。“ご近所さんも家族”みたいな、昔の日本のご近所付き合いみたいな関係性がまだありますから。
あと関西弁が、押しの強さを和らげている感じがします。例えば買い物をしていて「まけてや、安くしてや」と言うと、関西弁だから冗談みたいに聞こえるけど、「安くしてください」と標準語で言ったら、本気な感じがするじゃないですか(笑)。関西弁がその土地に住む人々のキャラクターを明るくしてくれていると思いますね。
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