ボランティア

「一度ゼロになったまち」でなぜ? 東日本大震災の被災地・南相馬市で今、“カフェ”が増えている理由(2ページ目)

東日本大震災によって甚大な被害を受けた福島県南相馬市。避難を余儀なくされ、一度は住民がゼロになったまちも。しかし今、南相馬市にはおしゃれな「カフェ」が増えていると言います。取材で見えてきたその理由とは。

筑波 君枝

執筆者:筑波 君枝

ボランティアガイド

日本で唯一の“フロンティアなまち”に心惹かれて

カフェ「コクリヤ」を経営する松野和志さん、美帆さん夫妻

カフェ「コクリヤ」を経営する松野和志さん、美帆さん夫妻

続いて訪ねたのは、鹿島区で2024年4月にオープン予定のカフェ「コクリヤ」。松野和志さんと美帆さん夫妻が経営しています。和志さんは神奈川県出身で、高校生のときに東日本大震災が起こり、宮城県石巻市へボランティアに出向きました。その経験から、「大きな災害が起きたときには人を助けに行く仕事をしたい」と陸上自衛隊に入隊。その後インフラ系の会社での営業職を経て、2023年に南相馬市へ移住し、移住相談窓口に勤務していました。

もともと和志さんはコーヒーが好きで勉強をしてきました。一方、美帆さんは製菓店で焼き菓子の修行をしていたお菓子作りのプロ。2人の経験をもとにコクリヤは、まずはコーヒーと焼き菓子が中心の店として開店し、慣れたらランチ、雑貨なども手がけていく予定だと言います。

鹿島区でカフェを開こうと思ったきっかけを和志さんはこう話します。

「将来、子どもが生まれたときに、地域の人と関わりあいながら子育てができるような場所に住みたいと考えていました。また、安定した企業で働いていると先が見えてしまうような気がして、やりたいことに挑戦したい、いつかではなく、若いうちに動きたいと移住を考えるようになりました」

・フロンティアなまち、南相馬市でたくさんの人たちとの出会いにワクワク
カウンター

店内にあるカウンター

その後、移住先についていろいろとリサーチを重ね、いくつかの候補が挙がる中、美帆さんが福島県出身という縁もあり、南相馬市に通うようになったそうです。南相馬で自分軸で新しいことにチャレンジしている人たちと出会い、地方にはこんなにいろいろな人がいるのか!とワクワクしてきたと和志さんは笑います。

「移住者の先輩から『浜通りって日本で唯一のフロンティアなまち。一度人が住めなくなった場所にこれから新しいまちづくりが行われる場所は日本でここしかない』と言われました。その言葉通り、通う度におもしろい人たちとの出会いがあり、ますます通うになり、移住を決めました」

・地域の人たちに気軽に立ち寄ってもらえるカフェにしたい
建設中のウッドデッキ

建設中のウッドデッキ

コクリヤは、外にはウッドデッキ、店内に入るとキッチンやカフェスペースに雑貨が並ぶ棚、奥にもカフェスペースが広がります。築40年ほどの住宅を「好きにリノベーションして良いですよ」という条件で借りているそうです。設計は和志さんが行いました。おもしろいのは普通の民家に盆栽倉庫がついていたこと。盆栽好きのオーナーが作った倉庫ですが、梁などを補強してカフェスペースとして生まれ変わらせました。

「古いものや使い込まれたものに美しさを感じるので、そこに共感してもらえるような方に利用してもらいたいと思っています。またこの地域には喫茶店がないので、地域の人たちにも気軽に立ち寄っていただけるお店にしたいですね」

和志さんはコクリヤの抱負をそう話してくれました。
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