「X」に取って代わるSNSとして注目された「Threads」
Threadsは、Facebookを運営するMetaが2023年7月6日にリリースしたテキストベースのSNSです。不特定多数にリアルタイムで短文を投稿する点でX(旧Twitter)と類似しており、Xに取って代わる可能性を持つサービスとしてリリースされました。リリースからわずか1日でユーザー数が3000万人を突破するなど、大きな注目を集めましたが、現状ではXの知名度や存在感を超えた印象はありません。SNS市場におけるThreadsの現状はどのようなものなのでしょうか。
世界のThreadsユーザー数
Threadsは公開から5日でアプリのダウンロード数が1億件を超え、好調なスタートを切りました。その後、月間利用者数は伸び悩み、2023年7月の利用者数を100%とすると、翌8月から減り始め、11月には80%まで落ち込みました。しかし、それまでサービス開始が遅れていたヨーロッパ圏でダウンロードができるようになったことから、12月には105%となり、初めて7月を上回りました。利用者数は当初の1億人から5%ほど増加したと考えられます。
通常、SNSは徐々に利用者数を増やすものですが、Threadsの場合、その話題性から最初に1億件ものダウンロードが行われたため、そこから大きく成長することができていないという印象です。
Xと比較してみると、Threadsの12月の利用者数はXの25%に留まっています。マスク氏による買収後に混乱が続くXは、前年同月比で利用者数が約10%減少しましたが、ThreadsがXを超えるのはまだまた遠い道のりと言えます。
ユーザー数1億人突破の背景
Threadsがリリース直後に1億件のダウンロードを達成できた要因は、ユーザー登録にInstagramのIDをそのまま使えることにあります。本来SNSのユーザー登録は面倒な作業であり、ユーザーが離脱しやすいものですが、ThreadsはInstagramのユーザーIDをそのまま利用できるため、Instagramユーザーが気軽にThreadsを開始できた側面があります。
言い換えれば、Threadsを利用したいというモチベーションが低いユーザーも多く、ユーザー数がそのままThreadsの人気を反映しているとは言えないということです。
Threadsの機能向上
Xと似たSNSとして登場したThreadsですが、Xとの相違点もありました。それは「ハッシュタグ」と「トレンド」がThreadsにはなかったということです。ハッシュタグとは、「#」の記号を用いて、そのツイートの内容や、話題のジャンルが一目でわかるように分類できる機能です。トレンドとは、現在話題になっているキーワードやハッシュタグがランキング形式で表示される機能です。リリース当初、Threadsにはこれらの機能がないため、情報収集のツールとしては不十分だという声がありました。
しかし、Metaは2023年12月7日、ハッシュタグと似た、投稿へのタグ付け機能のグローバルな提供を開始しました。また、2024年2月12日にはXのトレンドに似た機能のテストを米国ユーザー向けに開始したと発表しました。
このようにThreadsは順次機能の拡大を行っていますが、Xを超えるためにはXに似せるだけではなく、Xとの差別化も必要になります。
Threadsの成長に向けて、ポイントとなるのは?
Threadsが今後成長していくうえでポイントとなるのは何なのでしょうか。■女性ユーザーを取り込めるか
Instagramのユーザーの男女比は、男性43%、女性57%であり、女性ユーザーの割合が多いのが特徴です(Xは男性51%:女性49%)。ThreadsはInstagramをベースとしているため、今後女性ユーザーが多くなる可能性があります。女性に好まれるサービスを提供し、多くの女性ユーザーを取り込むことがThreadsの今後の課題となるでしょう。
■Xとすみ分けられるか
Xでは今「インプレゾンビ」が問題となっています。Xは投稿されたコンテンツのインプレッション(閲覧回数)に応じて広告収益の一部をユーザーに還元しています。これにより、人気のある(バズった)投稿に無関係な返信を行ったり、投稿を転載することでインプレッションを稼ごうとする「インプレゾンビ」と呼ばれるアカウントが大量発生しています。
(別記事「バズった投稿に意味不明なリプライがたくさん…Xで多発する「インプレゾンビ」、対処法は?」参照)
Xはインプレゾンビに対して手をこまねいており、ユーザーがストレスを感じる状況が続いています。対して、収益化を行っていないThreadsであればこのような問題は生じません。
また、Xは匿名性が確保されていることもあり、犯罪やヘイトスピーチが生まれやすい環境です。一方、ThreadsはInstagramと紐づけられているため匿名性は低く、また、収益化も行っていないことから、Xよりも健全なSNSとなる可能性を持っています。
今後Threadsが成長するためには、Xに取って代わるという視点だけでなく、Xとすみ分けるという視点も重要になります。健全性を求めるユーザーや低年齢層をターゲットにし、Xとのすみ分けを明確にできれば、ユーザー数のさらなる増加につながる可能性もあると考えられます。