大学生の就職活動

「いくら志望度高くても不採用」「むしろ入社動機弱くても内定」…企業は「志望理由」で何を見ている?

就職活動の面接で必ずといっていいほど質問される「志望理由」。就活生にとっては各社ごとに異なる志望動機を作成するのは大変な作業である。今回は志望動機の高さと面接での評価の関係性を解説する。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

「志望理由」を重視する企業と重視しない企業がある

「志望理由」を重視する企業と重視しない企業がある

「弊社への志望理由を教えてください」

就活を経験した学生や社会人であれば何十回とされたであろう質問。企業にとってなぜか「志望理由」は面接において必須質問になっているようだ。

就職情報サイトを運営する学情が企業の人事担当者に実施したアンケートでは、2024卒の採用において「面接での質問項目」で「志望理由」が72.9%で最多となり、次いで「学生時代に力を入れたこと」60.0%、「どのような社会人になりたいか」47.1%となった。

志望して面接を受けているのだからその理由を問うのは当たり前なのだが、志望理由や志望動機の高さをその学生の評価に直結させるかどうかは企業によって異なる。志望動機が弱いという理由で面接で落とされる学生もいれば、そこまで志望度の高くない企業から内定が出ることも就活ではよくある。

志望動機を学生の評価として重視する企業と、そこまで重視しない企業にはどのような採用方針の違いがあるのだろうか?
 

企業が志望理由を通じて確認したいこととは何か?

企業がエントリーシートや面接で「志望理由」を通じて知りたいことは大きく分けて2つある。

1つは「自社のどこに惹かれているのか?」というその学生の「興味関心の方向性」である。学生が企業を志望する理由は、その企業の事業内容、商品・サービス、理念、社風、評価制度、仕事内容、社員の人柄などさまざまだ。

どこに惹かれようと学生の自由なのだが、企業はそれによってその学生が何に惹かれ、これから働く企業にどんなことを求めているのかを知ることができる。

例えば、その企業が「海外展開を積極的にしていること」を志望理由にする学生がいれば、「海外に興味がある人材」と見なされ、もしその企業が将来的に海外で働きたい人材を積極的に採用している場合はプラスの評価となる。逆に大手企業に志望する学生でよくある「社会的な知名度」に惹かれて受けている場合、それ以外の部分が弱いと「ブランド志向で自社を受けている」と見られ、マイナス評価になることもあるだろう。

そして2つ目は「自社にどれくらい惹かれているか?」という「志望度の高さ」である。これはその後の内定承諾率にも影響するため、重視する採用担当者は多い。

学生を評価し内定を出したところで、その後辞退されてしまっては企業としてはそれまでのプロセスが無駄になってしまう。多少能力的には劣っていたとしても、入社への意欲が高い学生を評価し内定を出すことは、内定承諾につなげる上では必要な判断ともいえる。

採用力がそこまで高くない中小企業の場合は特に、志望動機の高さが評価に直結する傾向があるといえよう。知名度の低い中小企業にとっては、その学生の学歴や能力以上に、その企業を選んで志望してくれていることこそが最も大きな評価ポイントになるのは自然なことだ。

逆に志望理由は面接で聞くが、そこまで評価に直結しない企業は面接で何を重視しているのだろうか。
 

志望動機が高い学生が、入社後に活躍する人材とは限らない

冒頭で紹介したアンケート結果が表すように、全体の3割弱の企業は面接において志望理由を聞くことに重きを置いていないことが分かる。学生にとっては一生懸命“作り上げた”志望動機を聞かれないまま面接を終えるのは不完全燃焼と感じるかもしれないが、実際に、面接での評価として志望動機をそこまで重視しない企業というのは存在する。

筆者が以前働いていたリクルートも「面接で志望動機を聞かれない会社」として有名であった。当時人事部のマネージャーとして最終面接を担当していた先輩は、

「志望動機ほど変動性の高いものはないから」

と言っていた。要は志望動機ほど“簡単に変わる”ものはないというのだ。なぜならば志望動機はまさに学生自身が短期間の企業研究で“作り上げてくるもの”であり、それを鵜呑みにして評価したところで、入社して活躍するかどうかは分からないということだ。

ではリクルートに限らず、面接で志望動機を重視していない企業は、他の何を重視しているのだろうか?

その質問に当時の先輩ははっきりと、

「入社後の仕事で活躍する上で必要な思考と行動特性があるかどうか」

と言っていた。

そのために志望動機を聞く時間を省いてでも、幼少期から大学時代までの経験からその学生が何を考え、どう動いてきたのかをとにかく時間をかけて聞く。

例えば、部活動でテニスを県大会で優勝するまでとことんやってきた学生は「県大会優勝」という結果をアピールしようとするが、実際にとことん聞かれるのはテニスに対して何を考えながら、どう取り組んできたのかという行動だ。

なぜならば人間の思考と行動特性というのは経験の積み上げによって構築されたものであり、短期間の企業研究で作られた志望動機のように簡単には“変わらない”。

もしそのテニスの県大会で優勝できた学生が、男兄弟の末っ子だったこともあり幼少の頃から「負けず嫌い」な性格で、同じ部のライバルに負けたくない気持ちで朝練など他の選手が行う練習時間とは別に自分で努力してきた行動があったと分かれば、入社後の仕事に対しても勝ちを求めて貪欲に取り組む可能性が高いと評価される。

そういった思考と行動特性があると評価できれば、たとえもし、その学生が自社への志望度が低い場合でも、後からいくらでも口説いて入社につなげようという考えなのである。

学生自身が学生の立場で行う企業研究によって短期間に1人で作り上げた志望理由はいい意味で信用しておらず、学生自身をフラットに評価した上で、欲しい人材の場合は志望動機の形成に必要な情報と社員との接点を提供し、企業側も協力しながら一緒になって創り上げようという姿勢がそういった企業の多くにはある。

本来、志望動機は、学生と企業がコミュニケーションを取りながら協働作業で作り上げていくのが理想なのであろう。
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