映画

綾野剛「芝居が好き。作品に関わるすべてが愛しい」芝居への情熱を語る! 映画『花腐し』インタビュー(3ページ目)

2人の男と1人の女の愛の物語『花腐し』の主演・綾野剛さんにインタビュー。本作への思い、俳優の仕事への情熱など、さまざまなお話を伺いました。

斎藤 香

執筆者:斎藤 香

映画ガイド

自分の言葉で作品を濁したくないと思っていた 

――綾野さんは将来について、どう考えていますか? 俳優としてどうありたいなど青写真は描いていますか?
 
綾野
:明確にあります。役者としてではなく、仲間と成し遂げたい共有のビジョンが。その1つひとつが折り重なって作品へと昇華されています。
 
ですから我々から皆さんに発信するのは作品だけです。
「花腐し」綾野剛インタビュー

デビュー作のことから現在に至るまで俳優業について語ってくれました 

――まっさらな状態で作品を見てほしいということですね。
 
綾野
:そうですね。お恥ずかしいのですが、実は若い頃、インタビューを受ける行為はお茶を濁す行為だと思っていました。僕の言葉で作品を濁したくないと。ですが、その気持ちはすぐに変化していきました。
 
――それはなぜでしょうか?
 
綾野
:人はいろいろな形で楽しみ方を見つけていると思うんです。インタビューを読み惹かれて映画を見に行く人、作品について語っているのを聞いて興味を持つ人、バラエティー番組や舞台挨拶に立っている俳優の姿を見て、演じている姿とのギャップが楽しいという人……作品を伝える形や姿勢はたくさんあると気付いたからです。皆さんが映画を楽しむきっかけを広げていきたいです。
 

実話の重みに衝撃を受けた『エレファント』 

――All Aboutでは、取材させていただいた俳優さんに「好きな映画」「思い出の映画」に関するお話も聞いています。好きな映画などについて教えていただきたいです。
 
綾野
:ガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』(2003)です。アメリカで実際に起こったコロンバインの事件をベースにした作品で、僕はこの映画で初めてガス・ヴァン・サント監督作を見ました。
 
また、実話をベースにした作品を見るのも初めてでした。その事実を知り、言葉にできない衝撃を受け、心の整理ができず、どこかでいまだに明確な感想が言えずにいます。ですが、1つ確かなことは、それ以来、忘れることのない記憶として肉体に刻まれているということ。
 
――確かに事件が有名で衝撃的だっただけに、単に面白いとは言いにくいかもしれません。
 
綾野
:それくらい強烈に残っている映画です。あと出演作になりますが『ヤクザと家族 The Family』(2021)は僕にとって、とても大切な作品です。
綾野補「花腐し」

好きな映画についても語っていただきました 

――最後に、完成した映画を見た感想を教えてください。
 
綾野
:また1つ大切な作品が生まれました。登場人物全員が愛おしく、現場では、川上皓市さん(撮影)のカメラワークにうっとりしたり、荒井監督の眼差しや、いろいろな現場の日々の情景が今でも鮮明に残っていたりします。

栩谷として生きて、あの世界に存在できて、感謝です。多くの人に届きますように。
 

綾野剛(あやの・ごう)さんのプロフィール

1982年1月26日生まれ。岐阜県出身。2003年に俳優デビュー。以降、映画、ドラマなど出演作多数。2013年『横道世之介』『夏の終り』で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2016年『日本で一番悪い奴ら』で第40回日本アカデミー賞主演男優賞、2019年『閉鎖病棟―それぞれの朝―』で第43回日本アカデミー賞助演男優賞を受賞。その他の主な作品は『新宿スワン』シリーズ(2015、2017)『武曲 MUKOKU』(2017)『楽園』(2019)『影裏』(2020)『ヤクザと家族 The Family』(2021)。近作は『最後まで行く』(2023)。最新作は『カラオケ行こ!』(2024年1月公開予定)がある。
 

『花腐し』2023年11月10日(金)全国ロードショー

「花腐し」綾野剛インタビュー

(C)2023「花腐し」製作委員会

栩谷修一(綾野剛)の恋人の祥子(さとうほなみ)が、彼の友人と心中してしまいます。なぜ彼女はその男と心中したのか、その理由は分からず……。栩谷はピンク映画の監督ですが、業界は斜陽で厳しく、もう5年も映画を撮っていません。ある日、栩谷は伊関(柄本佑)という男と出会い、伊関は初めて付き合った女性のことについて、栩谷に語り始めるのですが……。

監督:荒井晴彦
原作:『花腐し』(松浦寿輝/講談社文庫)
脚本:荒井晴彦、中野太
出演:綾野剛、柄本佑、さとうほなみ、吉岡睦雄、川瀬陽太、MINAMO、Nia、マキタスポーツ、山崎ハコ、赤座美代子、奥田瑛二
 
撮影・取材・文:斎藤 香
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