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老齢基礎年金と老齢厚生年金や特別支給の老齢厚生年金は、給与収入がある場合でも受け取ることができます。ただし、厚生年金保険に加入しながら働く場合で、老齢厚生年金の月額と給与などの合計が1カ月あたり50万円を超える場合、老齢厚生年金や特別支給の老齢厚生年金(以下、このコラムでは厚生年金等という)の一部または全部が支給停止となります。これを在職老齢年金制度というのですが、この計算方法をみていきましょう。
老齢厚生年金等が全額支給されるケースと一部または全部支給停止されるケースをフローチャートでチェック
図のフローチャートにあるように、基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円以下の場合、支給停止を受けることなく全額支給されます。
一方、基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円を超える場合には
- (基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
なお、ここでいう基本月額とは加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額を指し、総報酬月額相当額とは、(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12を指しますが、ここではザックリと
- 基本月額=厚生年金等の額面月額
- 総報酬月額相当額=給与の年額を12で割ったもの
ケーススタディ 老齢厚生年金等を全額受給できるAさんの場合
まず老齢厚生年金等が支給停止されず、全額受給できるケースを見てみましょう。ここで紹介するAさんのケースでは給与の額面月額は25万円、賞与は年間30万円です。老齢厚生年金等は月額10万円です。
●総報酬月額相当額の計算式
- (25万円×12カ月)+30万円=330万円
- 330万円÷12カ月=27.5万円
●基本月額と総報酬月額相当額との合計の計算式
一方、老齢厚生年金等は月額10万円であることから
- 27.5万円(総報酬月額相当額)+10万円(基本月額)=37.5万円
ケーススタディ 老齢厚生年金等が一部支給停止となるBさんの場合
一方、老齢厚生年金等が一部支給停止となるBさんの場合を見てみましょう。Bさんの場合、給与の額面月額40万円、賞与は年間120万円、老齢厚生年金等は月額14万円です。
●総報酬月額相当額の計算式
- (40万円×12カ月)+120万円=600万円
- 600万円÷12カ月=50万円
一方、老齢厚生年金等は月額14万円であることから
●基本月額と総報酬月額相当額との合計の計算式
- 50万円(総報酬月額相当額)+14万円(基本月額)=64万円
支給停止金額は(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2という算式にあてはめると
- (64万円―50万円)÷2=7万円
なお、両方のパターン共通ですが、在職老齢年金制度の影響を受けるのは、老齢厚生年金等だけなので、老齢基礎年金についてはAさんのパターンでもBさんのパターンでも全額受給できます。
またここで紹介した在職老齢年金制度ですが、この50万円という基準に引き上げられたのは2024年4月からです。2022年3月までは28万円、2022年4月から2023年3月までは47万円、2023年4月から2024年3月までは48万円でしたので、「人生100年時代」にあわせた制度設計といえるでしょう。