マイナス金利政策が解除されると住宅ローンの返済にどんな影響が出る?
きっかけは、日本銀行の植田和男総裁が9月9日付のメディアのインタビューで、年内にもマイナス金利政策の解除を判断する可能性を示唆したことです。
マイナス金利の解除は住宅ローンにどのような影響を与えるのでしょうか? 金利が上がると月々の返済はどれくらい増加するのでしょうか? そして、破産のリスクは本当にあるのでしょうか?
生命保険・不動産を軸とした家計改善・資産形成の相談に取り組むファイナンシャルプランナーの井上陽一さんが、これらの疑問に答えます。
Q. マイナス金利が解除されると住宅ローンはどうなる?
マイナス金利が解除されると、変動金利型の住宅ローン金利が上昇し、ローン返済の負担が増えることになります。変動金利型の金利が上がるのは、短期金利の変動に応じて半年ごとに金利が見直されるためです。住宅ローンの種類には、固定金利型と変動金利型がありますが、固定金利型は、長期金利に連動し、ローン契約を結んだ時点の金利が契約で定められた期間の終了まで続きます。
Q. 破産のリスクは本当にあるの?
破産のリスクは誰にでもありますが、家計の状態や住宅ローン返済の負担の重さなどによるため、リスクの程度は全員同じではありません。まずは家計の現状を把握して、住宅ローンの金利が何%に達すると返済が苦しくなるかを計算してみてください。ここでは、日本の平均的な世帯を例に、金利の変動による住宅ローン返済の影響をシミュレーションしてみましょう。
▽シナリオ
年収:500万円
住宅ローン残高:3000万円
返済期間:30年
ボーナス払い:なし
返済方法:元利均等返済
▽シミュレーション1:金利が0.5%
月々の返済額:約9万円
▽シミュレーション2:金利が1.5%に上昇
月々の返済額:約10万3500円
金利が1%上昇した場合、月々の返済額は約1万3500円増えます。年間では約16万2000円の追加負担です。年収500万円の手取り収入は月30万円前後なので、手取りの5%分支出が増えることになります。
これは一例に過ぎませんが、金利上昇の影響は無視できません。もし金利がさらに上昇すると、返済の負担はさらに重くなり、破産のリスクも高まります。
Q. 住宅ローンの返済が困難な場合、対策はあるの?
金利が上がるとたちまちローン返済が苦しくなるような状態であれば、今のうちに次のことをやってみてください。1.借り換えを検討
借り換えで返済負担を軽くできる可能性があります。複数の金融機関を比較し(審査に出してみる)、借り換え費用の負担も含めて判断しましょう。
また、金利上昇への不安を感じるならば、固定金利型への借り換えを検討してみてください。ただし、固定金利は現在の変動金利と比べて高いので、無理のない返済額になっていることを確認した上で事を進めてください。
2.支出を減らし、収入を増やせないか探る
無駄の削減や節約で支出を減らし、働き方の変更、副業や転職などで収入を増やせないかを探ります。多少の金利上昇では揺るがない強い家計を築いておきましょう。
3.売却の検討
自宅の売却も検討してみましょう。通常の売却とセール・アンド・リースバックがあります。
いずれも売却代金でローンが完済できることが条件です。売却価格査定の段階でローン残高を下回るときはローン借入先に相談してください。
また、通常売却の場合、次の住まいを確保しなければならず、家賃など新たな支出が発生することになります。セール・アンド・リースバックは、自宅を売却し、売却した相手からそのまま自宅を借りる方法のため、同じ家に住み続けることはできますが、新たに家賃が発生することになります。
自宅の売却は以下のことに気を付けて検討してください。
・売却代金でローンが完済できる
・売却後の支出が、今のローン返済額+住居費より多くならない
・セール・アンド・リースバックの場合、できるだけ長く同じ家に住むつもりなら定期借家契約にしない(定期借家契約では、契約の更新が原則としてできず、契約が一定の期間で自動的に終了してしまうため)
4.金融機関に相談する
ローン返済が苦しくなると気付いた時点で、延滞する前に、必ずローン借入先である金融機関に相談しましょう。返済条件の変更によって一時的に負担を軽くしてもらうなど、破産を防げる可能性が高まります。
4つの対策はありきたりですが、焦ったり追い込まれたりすると、判断を誤ったり、交渉相手から足元を見られて思い通りにいきません。余裕のあるうちに行動を起こし、これらの準備をしておくことが一番の対策ということになります。