<目次>
会社を退職した後の健康保険の選択肢には、「家族の被扶養者になる」「国民健康保険に加入する」「任意継続被保険者になる」の3つがあります。どの制度が得になるかは、年収、扶養家族など個々の状況ごとで異なります。今回は、それぞれのポイントを確認しておきましょう。
退職後の健康保険の選択肢1:家族が加入する健康保険の被扶養者になる
退職者が、親や子、配偶者、兄弟姉妹など家族の収入で生計維持されるのであれば、その親や配偶者が加入している健康保険の扶養に入れてもらう(被扶養者になる)ことができます。家族が加入している健康保険の被扶養者になっても、家族が負担する健康保険料は上がりません。さらに、被扶養者自身も保険料を支払わずにすみます。
しかし、被扶養者になるには「年収が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)で、かつ、健康保険に加入している家族の年収の2分の1未満」という収入要件を満たす必要があります。また、収入要件には失業給付も含まれますので、注意しましょう。
退職後の健康保険の選択肢2:任意継続被保険者になる
任意継続被保険者制度とは、今まで加入していた健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に最高2年間、引き続き加入できる制度です。ただし会社で働いていたときの健康保険料は事業主と折半でしたが、任意継続被保険者になると全額自己負担となります。在職中と比べると、保険料が2倍になる点は注意しましょう。とはいえ、健康保険組合などでは独自の給付を提供しており、国民健康保険に加入するよりも手厚い保障が受けられる点はメリットです。
協会けんぽの任意継続被保険者の健康保険料は、
【1】資格を喪失した時の標準報酬月額
【2】 前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日時点における全ての協会けんぽの被保険者の標準報酬月額の平均額を、標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額
どちらか少ない額と規定されています。この保険料は、任意継続に加入している原則として2年間は変わりません。
退職した年は、国民健康保険料と比べても支払う保険料に大きな差はないかもしれません。しかし、もし、退職した年の収入が退職前よりも減少した場合は、国民健康保険の方が保険料の負担が少なくなります。任意継続からはいつでも自由に脱退できるため、年収に応じて、どちらの負担が少なくなるか比較しましょう。
退職後の健康保険の選択肢3:国民健康保険に加入する
国民健康保険は、自営業者、フリーランスなどの企業勤めをしていない人が加入している健康保険で、都道府県と市町村(特別区を含む)が運営しています。支払う国民健康保険料は、前年の所得にかかる所得割率、住民一人当たり定額の均等割率、ひと世帯当たりにかかる平等割率など、自治体ごとで、大きく異なります。退職した年は、任意継続被保険者で負担する保険料と比較してもあまり変わらないケースが多いでしょう。しかし、国民健康保険の保険料は、前年の所得をもとにするため、退職した年の収入が少なければ、2年目の保険料の負担が減ります。
扶養家族がいる場合は慎重な比較が必要
退職した1年目は、任意継続被保険者の方が得と感じるかもしれませんが、2年目になると、年収次第では国民健康保険の保険料の方が安くなるかもしれません。その都度、健康保険料を確認して、割安な方に加入しましょう。ただし、退職者に扶養家族がいる場合は状況が変わります。
任意継続は、扶養家族がいても追加保険料は発生しません。一方、国民健康保険には扶養家族という概念はありません。つまり退職者が国民健康保険に加入する場合、退職者に扶養されていた家族は各自で国民健康保険に加入して保険料を支払います。どちらが得になるか慎重に比較するようにしましょう。