損害保険

再び値上げ!? 2024年度の火災保険の改定動向

損保の業界団体である損害保険料率算出機構が火災保険の参考純率の届け出を2023年6月に出しました。これにより2024年度中にも再び火災保険が全国平均で値上げ改定される見込みとなりました。火災保険の改定の内容と動向をまとめます。

平野 敦之

執筆者:平野 敦之

損害保険ガイド

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<目次>

2024年度中にも全国平均で火災保険が値上げ改定される見通し

火災保険は2015年の秋頃から頻繁に改定が実施されています。全国平均の改定率はいずれも値上げとなっており、火災保険料の負担増が続いています。

2023年6月21日に損害保険料率算出機構が参考純率の改定の届け出を出したことで、2024年度中にも再び全国平均で火災保険が値上げ改定される見通しとなりました。
火災保険の値上げ改定

火災保険の値上げ改定

火災保険の参考純率改定の背景と直近の改定

具体的に火災保険の改定についてみていきましょう。改正の出所は損害保険料率算出機構が、金融庁長官に届け出した参考純率の改定内容です。

今回の火災保険の参考純率(後で説明)が改定された主な理由は次の2点です。
 
  • 自然災害などによる保険金支払いの増加と住宅の老朽化と修理費高騰などへの対応
  • リスクに応じた水災料率における契約者間の保険料負担の公平化など
 
自然災害が増加していることは今さら言うまでもありませんが、その他にも建物の老朽化と修理費の高騰も問題になっています。建物が老朽化すると漏水事故や電気設備による火災、台風などによる損壊リスクが高くなるためです。つまり建物の修理費が上がっていることも保険金の支払いの増加に繋がっています。

さらに、これまでは台風などによるリスクについて、過去からのデータを用いて、将来の保険金支払いを推定していましたが、これを近年の自然災害が増えたデータにより評価する方法に変えています。自然災害が増えたデータを利用する方が将来の保険金の支払いを推定しやすいからです。評価するデータを変更したことも今回の改定の理由のひとつです。

またこの改定のポイントと言えるのが、水災料率を契約者のリスクを反映させた内容に変えることです。

届け出の内容を見ると、地域の洪水ハザードマップ等の水災リスク情報が拡充されているものの、自分のリスクが低いと判断した契約者が保険料節約の目的で自身の火災保険から水災補償を外す傾向がみられるようです。

こうした状況も踏まえて公平性のある水災保険料率を導入するため個別のリスクを反映させるかたちになりました。

2014年6月に火災保険の参考純率が改定されてから、今回の2023年6月の参考純率改定までに計5回の参考純率の改定が実施されており、全国平均ではすべて保険料率が引き上げられています。

火災保険の参考純率とは?

この記事の初めから「参考純率」という言葉を何度か使っていますが、よく分からない人も多いでしょう。火災保険の保険料(掛金)は、その内訳を「純保険料部分」と「付加保険料」の2つに分けられます。それぞれの内容は次のとおりです。
 
  • 純保険料:将来事故が発生したときに保険金の支払いに充てられる部分
  • 付加保険料:保険会社の運営経費などに充てられる部分
 
上記のうち「純保険料」から算出しているのが「参考純率」です。

損害保険料率算出機構は、会員会社である各損害保険会社から契約および保険金の支払いデータを受け取っています。これを受けて毎年度、参考純率が適正な水準かを検証して、改定(値上げ・値下げ)の必要があれば金融庁に届け出を行います。火災保険はすでに自由化していますから、各損害保険会社はこの参考純率を文字通り参考にすることができます。

各社参考純率の使用義務はありませんが、保険の仕組み上はデータが多い方がいいので、多くの損保で参考純率を文字通り参考にしています。

この参考純率(純保険料部分)に保険会社の経費等に充てられる付加保険料を加味して損保各社が改定に反映します。

参考純率の平均改定率と主な改定内容

今回の参考純率の改定について、全国の平均改定率と改定内容のポイントは以下となります。
 
  1. 火災保険の参考純率を全国平均で13.0%引き上げ
  2. 水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化
 
※参考純率と実際の火災保険の平均改定率は異なります。また個々の契約内容等によって実際の改定幅は違います。

前回の火災保険の参考純率改定は平均で10.9%と、今までの改定の数回分を1回で引き上げるほどの引き上げでしたが、今回はそれ以上になります。

水災リスクの細分化については、地域の単位は建物の所在する市区町村別となり、その区分数は「1等地(保険料が最も安い)」から「5等地(保険料が最も高い)」までの5区分となります。なお、保険料が最も高い地域と最も低い地域の保険料率の較差は約1.2倍です。

あくまで参考純率での話ですので、これに各損保が付加保険料部分の内容を加味するなどして個別に改定率を決めて実施します。

今回の改定は住んでいる地域など個別の水災料率危険を反映させることが大きなポイントで、水災リスクの高い地域に住んでいる人と低い地域に住んでいる人で受ける影響がかなり異なる可能性が高いと考えてください。

なお、下記より居住の市区町村の水災危険の検索をすることができます。内水氾濫等も考慮しているため洪水ハザードマップとは結果が異なることがあります。
損害保険料率算出機構 水災等地検索
 

火災保険の改定実施はいつになる?

前述の通り、火災保険はすでに自由化されているため、いつ火災保険の改定を実施するかは各損保の自由です。現時点では各社特に何も公表していません。

過去の改定を見ると、参考純率改定の届け出がでた後、一定の周知期間(1年~1年半程度)を経て損保各社が自社の火災保険の改定を実施します。ちなみに前回は、次のように火災保険の改定が実施されました。
 
  • 参考純率改定の届出日:2021年5月21日
  • 火災保険の実際の改定日:2023年10月1日(主に大手損保)
 
各社一斉に改定する必要はありませんが、特に保険制度の仕組みそのものが大きく変わる改定などでは、大手損保グループは同じタイミングで実施することが多いようです。今回水災リスクを反映させることから、大手を中心に同じ時期(2024年度中)に改定される可能性が高いと考えます。

次回の火災保険の改定までにしておくこと

改定までにすることは、まずは現在加入している火災保険がいつからいつまでの契約か確認しておきましょう。長期契約であれば契約している間に改定が実施されており、その影響も受けるためです。

火災保険と同時に地震保険に加入している人は、地震保険の改定にも注意してください(一番近い最後の改定は2022年10月1日)。その上で2024年度に入ったら、火災保険の改定の実施がいつ頃になりそうか情報収集を心がけてください。

保険代理店経由で加入している人は、改定の動きが分かったら知らせてほしい旨を連絡しておくのも方法です。後は現在契約している火災保険満期の時期にもよりますが、改定が実施された後の遠くない時期に満期がきて、値上げの影響が大きそうなら前倒しで火災保険の見直しをすることも考えておいてください。

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