シリーズ史上最高のFireタブレット
Fire Max 11は、Fireシリーズ史上、最も高スペックな端末です。まずは最も高性能だった「Fire HD 10 Plus(以降、10Plus)」と比較しながらスペックを見ていきます。まず、ディスプレイから。Fireタブレット史上最もサイズが大きく、高解像度の11インチディスプレイ(2000×200ドット、213ppi)を搭載。10Plusはベゼル(額縁部分)が太くて今どき感のない見た目でしたが、Fire Max 11のベゼルはすっきりとした印象の太さとなっています。 搭載SoC(システム・オン・チップ)は公表されていませんが、ARM Cortex-A78(最大2.2GHz)の高性能コアが2コア、ARM Cortex-A55(最大2GHz)の高効率コアが6コアの合計8コアで構成。10Plusと比較すると約50%高速化しているので、よりスムーズな動作が期待できます。
ストレージ容量も大幅にアップしています。10Plusは最大64GBでしたが、Fire Max 11は64GBまたは128GBから選択できるうえに、これまで通り外部ストレージとしてmicroSDも使えます。これだけの容量があれば、例えばドラマの1シーズンはすべてダウンロードして保存できるので、移動中などのオフライン動画鑑賞もはかどります。
カメラは、フロント/リアともに8メガピクセルです。10Plusのフロントカメラは2メガピクセルで、ZoomやTeamsなどで使うには心許ないスペック。Fire Max 11では、高精細な映像が期待できます。
バッテリー駆動時間は、10Plusが最大12時間だったのに対して、最大14時間まで伸びています。バッテリー容量は7500mAh。10Plusのバッテリー容量が6500mAhなので、駆動時間が伸びているのはバッテリー容量が関係していそうです。そのほか、SoCの6個ある高効率コアが効率よく動作すれば、実際の駆動時間はもっと長くなる可能性はあります。
Fireタブレットのトレードマークは、良くも悪くも質実剛健なプラスチック筐体です。しかし、Fire Max 11ではアルミ筐体を採用しており、見た目の美しさだけではなく質感も上がりました。他のタブレットと比較しても見劣りしません。
Fireシリーズは、コスト優先で手に取りやすい価格になることが最優先で開発されている認識でしたが、Fire Max 11は、そうでない印象を持ちます。先のアルミ筐体しかり、これまでなかった生体認証が搭載されているのも、そう感じる理由です。
純正周辺機器は、専用キーボードカバーとスタイラスペン
Fire Max 11には、専用キーボードカバーとスタイラスペンが、純正周辺機器として用意されています。スタンドを兼ねたキーボードは、専用コネクターで接続し磁石で端末に固定します。キーボード動作のための電力は、そのコネクタから供給されるので、バッテリー切れの心配はありません。
キー配列は日本語のみで、変則はなく癖のない配列です。通常のキーボードでファンクションキーがある部分は、Fire OSに適合したショートカットキーになっています。トラックパッドも搭載されており、ピンチズームや2本指スクロールなど、マルチタッチのジェスチャーにも対応しています。 スタイラスペンは、ボタンが1つあり、Fire Max 11の横側にマグネットで固定できます。電池を入れれば、ペアリングすることなく使えます。
Fire Max 11に感じる違和感
このように過去のFireシリーズと比較して性能アップしたFire Max 11ですが、違和感があるのも事実です。Fire Max 11に用意された純正周辺機器は、誰のためのものなのでしょうか。既存のユーザーは、安価なタブレットとして割り切って購入しているので、多くは響かないはずです。となれば、新規ユーザーが対象です。
近年は最初のPCとしてタブレットが選ばれることもあるので、キーボードやペンを周辺機器としてラインアップする必要があるのかもしれません。となれば、周辺機器が生かせるアプリが必要ですが、課題はAmazonアプリストアです。
例えば、筆者が原稿書きに使っている「iA Writer」は、Amazonアプリストアにはありません。Webブラウザも「Google Chrome」が使えず、Amazonの「Silkブラウザ」を使う必要があります。使い慣れたアプリを変えてまでFire Max 11を選ぶ理由もないので、周辺機器が誰のために用意されたか分からないのが、筆者が感じた違和感です。 大画面を生かして、迫力ある動画を観たり見開きで雑誌や漫画の電子書籍を楽しむには、Fireタブレット史上、最高の体験が得られることは間違いありません。よって、予算が許すならば間違いない選択といえるでしょう。
しかし、生産性向上のタブレットとしても使いたいのであれば、別のタブレットを検討した方が無難です。あえて、いばらの道を進みパイオニアを目指す選択も考えられますが、冷静に見れば、あと数世代の時間が必要だと感じています。