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岸田総理は「異次元の少子化対策」の素案として児童手当の拡充を掲げる一方で、扶養控除の廃止を検討しています。そもそも扶養控除とは何でしょうか。また、なぜ廃止することが検討されているのでしょうか。今回は扶養控除について解説します。
扶養控除とは扶養親族がいる人が収入から差し引くことができる
所得税は年間の収入全てにかかるわけではありません。その方の現況に応じて、収入から一定額を差し引いた金額に税率をかけて税金を算出します。この一定の金額を差し引くことを「控除」と呼び、所得控除には15種類(*1)あります。扶養控除とは15種類の所得控除の一つであり、扶養している親族がいる場合に収入から差し引くことができます。
*1:基礎控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、勤労学生控除、寡婦控除、ひとり親控除、障害者控除、医療費控除、雑損控除、小規模企業共済等掛金控除、社会保険料控除、寄附金控除、生命保険料控除、地震保険料控除
扶養控除の金額はいくら?
扶養控除の金額は、親族の年齢や同居の有無で異なります。例えば子どもを扶養している場合、年末時点の年齢が16歳以上19歳未満であれば「一般の控除対象扶養親族」として38万円、19歳以上23歳未満であれば「特定扶養親族」として63万円を収入から差し引くことができます。 また親を扶養している場合、同居の場合は「同居老親等」として58万円、別居している場合は「同居老親等以外」として48万円を収入から差し引くことができます。なお、病気などによる入院で一時的に別居している場合は「同居」に該当しますが、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居には該当しません。〈参考〉扶養控除(国税庁HP)
廃止が検討されているのは16歳以上19歳未満の扶養控除です
今回廃止が検討されているのは、16歳以上19歳未満の子どもに対する扶養控除38万円です。その理由ですが、現在中学卒業までとされている児童手当の対象を、2024年度以降は高校卒業までに広げる予定だからです。つまり高校生も児童手当の対象とするなら、これまで税優遇されていた高校生への扶養控除はなくしてしまおうというわけです。
過去には16歳未満への控除が廃止されています
現在の扶養控除は16歳以上が対象ですが、以前は16歳未満の子にも「年少扶養控除」がありました。しかしながら2010年度の税制改正により「子ども手当(現児童手当)」が創設されたことから「年少扶養控除」は廃止となっています。その時も「手当の対象にするのであれば税優遇はなくすべき」との声があったことが廃止の理由の一つでした。扶養控除が廃止されるかは現段階では不透明です
2023年6月1日に行われた「こども未来戦略会議」の資料の中には「児童手当の拡充」と共に注釈に「高校生の扶養控除との関係をどう考えるか整理する」との記載があり、これが今回の扶養控除廃止の検討を意味しています。一方で、同日に子育て支援政策の推進を求める団体が参院議員会館で「扶養控除の廃止ストップ」を求める緊急集会を開くなど、扶養控除廃止に関する議論はこれからです。現段階では本当に扶養控除が廃止されるのかは不透明であり、今後の動向を注視する必要がありそうです。
〈参考〉こども未来戦略会議(内閣官房HP)