愛されキャラクター、透の役作り
――宮沢さんの考える屋内透とその役作りを教えてください。宮沢:この作品はきっと温かい気持ちになる映画だと思ったので、見てくださる皆さんに愛されるキャラクターにしたいと考えて役作りをしていきました。
透くんの春ちゃんに対する話し方は、ときどきキツく感じてしまうことがあるのですが、それは相手の気持ちが理解しづらい、共感性が低いという透くんの発達障害の特性のひとつでもあります。でも、透くんの言葉の印象を少し柔らかくしたくて、動きや仕草を工夫しました。
手をたくさん動かしたり、目線をあちこちに動かしてみたり。そういう仕草は「どうやって伝えたらいいのだろう」と一生懸命考えながら話している透くんの気遣いとか思いやりなのかなと考えながら演じました。 ――実際に発達障害の当事者の方や画家の方などのリサーチはされたのでしょうか?
宮沢:『はざまに生きる、春』の制作が決まった時はまだコロナ禍だったので、葛監督とはリモートで何度も打ち合わせを重ねました。そして撮影に入る少し前に、医療関係の方や発達障害の当事者の方にもご協力いただいて、お話しする機会を設けていただきました。
僕はあらかじめ質問したいことをノートにまとめておいたのですが、その打ち合わせで当事者の方は初めて会う人に囲まれて、かなり緊張されていたんです。
そんな様子を見て、僕があれこれ質問しても何も生まれないなと思い「食べ物は何が好きですか?」とか「お休みの日は何をしているんですか?」とか、簡単な世間話をしました。僕が知りたかったのは、自然な状態での佇まいや、言葉の使い方、目や体の動きなどだったので、構えないで自然に接するようにしました。
あとは葛監督が発達障害の当事者の方たちに取材した動画なども参考にしました。それを見た時「いろんなタイプの方がいるんだな」と思ったんです。
――確かに。同じ人間はいませんよね。個性は人それぞれですよね。
宮沢:典型的なものはひとつもないし、ジャンル分けができるわけでもない。だから僕は自分が思う透くんを作っていっていいのではないかと思いました。もちろん監督や医療関係者の方と相談しながらですが、自由に役作りをしていいと思えた時から、少し気が楽になりました。
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