東日本大震災、新興宗教、熟年夫婦の危機、不治の病など、シリアスなテーマながら、荻上監督らしいユーモアも散りばめられた力作です。この映画に込めた思い、映画制作の裏側など、荻上監督に伺いました。
映画『波紋』の荻上直子監督にインタビュー
――映画『波紋』は、先が読めない展開で見入ってしまいました。まずはこの映画を作るきっかけと脚本について教えてください。荻上直子監督(以下、荻上監督): 最初は夫や妻、子どもなど、家族それぞれの話を均等に描こうと思っていたんですが、脚本の筆が乗らなかったんです。とても悩んで時間がかかりましたが、依子の話にフォーカスしたら、だんだん物語がうまく転がっていきました。
――依子は夫が出ていってから宗教にのめり込んでいきますが、この設定にしたのはなぜですか?
荻上監督:もともと私の家の近所に宗教団体の施設があって、多くの人が出入りしているのを見て、「人が宗教をよりどころにするのはなぜだろう」と興味を抱いたのがきっかけです。
あと私が卒業した高校は、宗教関連ではないのですが道徳教育に熱心で、畳の上で切磋琢磨の文言を唱えたり、歌を歌ったりする学校だったんです。その時の体験や抱いた違和感も物語に生かしています。
――宗教団体や信者について、取材はされたのでしょうか?
荻上監督:映画のスタッフに宗教団体に潜入取材をしてもらったりはしましたが、特に信者の方を直接取材はしていません。フィクションの中で、先ほどの私の体験や見たものを膨らませて書きました。
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