大学生の就職活動

就活が始まると「テニサーの副幹事長」が世の中に急増するのはなぜ? 企業が真に求める新卒人材は……

就活では「ガクチカ」といわれる学生時代に力を入れたことをよく聞かれるが、なぜか「サークル活動」と「リーダー体験」をエピソードとして選ぼうとする学生は多い。今回はその中でも「テニスサークル」と「副幹事長」をしていた学生が増える理由を解説する。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

テニスをする人

企業が求める新卒人材と学生が考えるアピールポイントには乖離がある? 画像:HIME&HINA / PIXTA(ピクスタ)

「就活が始まると世の中に“テニスサークルの副幹事長”が急に増える」

これは就活都市伝説のようにも聞こえるが、実際に毎年新卒採用で多くの学生と関わる採用担当者であれば誰もが一度は味わったことのある感覚かもしれない。

筆者自身も大学生の就職支援をする中で、なぜか「テニスサークル」に所属していた学生と「副幹事長」の役職についていた学生が多いことを、エントリーシートの添削や面接指導を通じて感じてきた。

実際にそれらの経験をしてきた学生が多いのも事実かもしれないが、就活生特有の偏った固定概念が影響している可能性も指摘したい。
 

固定概念(1)ガクチカのエピソードには「サークル活動」が最も適している?

結論から言うと「ガクチカ」といわれる「学生時代に最も力を入れたこと」はどんな経験でも良い。これは全国の採用担当者の共通意見だろう。

しかしなぜか「大学の勉強」や「アルバイト」をガクチカとして語ることに抵抗感のある学生が一定数いるのだ。

以前ラーメン屋のアルバイトを4年間ひたすら頑張っていた学生がいた。明らかにガクチカではそのエピソードを使うだろうと思いきや、ほとんど参加していなかったサークル活動を選んでいた。理由を聞くと彼の家は母子家庭で、ラーメン屋のアルバイトの給料を学費の足しにしていた経緯があり、その事実が彼にとってはコンプレックスであったため就活で語るに値しないと思ったらしい。

あまりにも勿体ないので、アルバイトを通じて自分で学費を稼いだ経験が就活ではどれだけ価値のある武器になるかを伝え、勇気を出してそのエピソードを使ってもらったところ大手数社から内定が出て本人は驚いていた。

実は彼が所属し、当初使おうとしていたエピソードも「テニスサークル」だった。コンプレックスを感じることなく気軽に伝えることができ、企業にも理解してもらいやすい体験と彼は認識していたが、危うく自分の武器を使わずに就活をするところだった。

多くの学生にとってサークル活動は楽しい思い出であり活動内容も記憶に残っていることが多く、テニスは特に競技として認知度も高い。「伝え易さ」を基準に選ぶのであれば、「テニスサークル」の活動は最も選ばれ易いエピソードなのだろう。
 

固定概念(2)「役職者」や「リーダー経験者」の方が選考で有利になる?

ただし“楽しいだけの経験”では就活で使う武器としては物足りないとも、学生は認識している。

そこで就活生としてはなんとか「役職者」であったことも伝えて「リーダー体験」を持ち合わせていることをアピールしたくなる。

そこで都合が良いのが「副幹事長」という役職だ。「幹事長」は1人であることが多いが「副幹事長」のようなサブリーダーの役職が複数名いるサークルは多い。実際にはほとんど仕事をしていない「名ばかり副幹事長」もいるのは事実だが「役職はないよりもあった方が安心」というのが就活生の本音の心理だろう。中には就活が始まってから、事実づくりのために副幹事長という役職を作るサークルもある。就活の時期になると世の中に「副幹事長」の役職者が増えるというのはこれが原因かもしれない。

ただ実際に企業は「リーダー経験」を必須と考えているのだろうか?

帝国データバンクの2022年の調査によると「企業が求める人材像」のトップ2は「コミュニケーション能力が高い(42.3%)」と「意欲的である(42.2%)」であった(※)。もちろん求める能力に「リーダーシップ」が入っている企業も多いかもしれないが、言葉を変えれば「自ら意欲的に周囲とコミュニケーションを取る力」と表現するのが適切なのかもしれない。

そのような意味では役職の有無にこだわらず、積極的に周囲に対して自分から行動を起こした経験を見つけてアピールする方がよっぽど評価につながるであろう。
 

「テニスサークルの副幹事長」で評価を得るために大切なこと

もし就活の面接で「テニスサークルの副幹事長でした」と伝えると人事からは「君もか」と思われる場面があるかもしれない。決してそのエピソードを使ってはいけないというわけではないが、評価につなげていくには工夫が必要だろう。

1つ出来ることとしては「どんなタイプのテニスサークルの副幹事長だったのか」まで自身を振り返って伝えることだ。


「テニスサークルの副幹事長」はたくさんいるかもしれないが、プレーで周囲を引っ張る「プレイヤータイプ」だったのか、雰囲気作りが得意な「ムードメーカータイプ」だったのか、もしくは経理などの管理面で組織を支える「マネージャータイプ」だったのか、自分のリーダーのスタイルまで伝えることで自身の強みや特徴が加わり、そこに企業は価値を感じて評価してくれる可能性は高まる。

ガクチカを伝える上でもっとも大切なのはどんなサークルや役職だったのかよりも、そこで自分がどんな役割や行動をしてきたのか、具体的なエピソードと共に伝えることなのだ。


>次ページ:企業が求める人材像TOP10


<参考>
企業が求める人材像、「コミュニケーション能力が高い」がトップ(帝国データバンク)
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