定年・退職のお金

みじめな「おひとり様老後」にしないためには、どうする? 2023年最新

2021年単独世帯は総世帯の3割近くいます。さらに65歳以上の者のみが住む世帯に限ると、単独世帯は5割近くを占めました(国民生活基礎調査の概況)。おひとり様世帯は増加し続けています。みじめな老後を避けるための策を「お金」と「つながり」から考えました。

大沼 恵美子

執筆者:大沼 恵美子

貯蓄ガイド

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<目次>
2021年6月高齢者世帯のほぼ5割が単独世帯。やはり女性世帯が男性世帯より多い。

2021年6月3日時点、高齢者世帯は夫婦世帯より単独世帯が多い。人生100年時代、これからどうなる……

65歳以上の高齢者のみが住む世帯は、ほぼ半分が単独世帯

2018年(平成30年)「日本の世帯数の将来推計(全国推計)(国立社会保障・人口問題研究所)」は、世帯主が65歳以上の世帯のうち、単独世帯が占める割合を2025年35.7%、2040年40.0%と予測しました。ところが、2021(令和3)年「国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省))によると、2021年6月3日時点で、65歳以上の高齢者のみの世帯においては、単独世帯がほぼ5割に達したことがわかりました。おひとり様時代は猛スピードで近づいています。

前出の「国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省))によると、全世帯の29.5%を「単独世帯」が占め最多です。高齢者世帯(*)に限っても、最多は「単独世帯」で49.3%(男性17.6%、女性31.7%)です。

(*)高齢者世帯:65歳以上の者のみ、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯

2022年に生まれた赤ちゃんは過去最低の79万9728人。一方で平均寿命は延びています。少子高齢化は予測を上回るハイスピードで進んでおり、将来的に現在のような高齢者福祉を受け続けることは難しいでしょう。

<出所>
2018(平成30)年推計日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(国立社会保障・人口問題研究所)
2021(令和3)年「国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)

「お金」への対応策:生活資金の目安は女性1400万円強

おひとり様世帯が増加し続けている中で、みじめなおひとり様の老後を避けるために、どのくらいの老後資金を備えればよいのか対策を考えていきましょう。

総務省「家計調査報告(家計収支編)・2022年(令和4年)単身世帯詳細結果表」によると、65歳以上の高齢単身無職世帯の家計収支(月額)は次の通りです。
 
  • 実収入:13万4915円(うち社会保障給付12万1496円)
  • 消費支出:14万3139円
  • 非消費支出(直接税と社会保険税):1万2356円(※)
 
もう少し詳しく、65歳以上の単身世帯の男女別の消費支出を見てみましょう。
  • 男性:178万7016円(14万8918円/月)
  • 女性:178万7652円(14万8971円/月)
 
これに、前述の(※)非消費支出の年額14万8272円(1万2356円/月から換算)を加えた年間支出は、男性が193万5288円、女性は193万5924円。年間の生活費の目安は194万円ということになります。

一方、収入の要である公的年金受給額、65歳以上の厚生年金保険(第1号)老齢年金受給権者の年金額(基礎年金を含む)は、男性202万8072円、女性131万1132円です(「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚生労働省)より)。
  • 男性:202万8072円(16万9006円/月)
  • 女性:131万1132円(10万9261円/月)
 
老後資金の算出では、老後期間をどのくらいにするかが非常に重要なポイントです。「令和3年簡易生命表の概況(厚生労働省)」によると、90歳まで生存する男性は約28%、女性は52%。女性は95歳までの生存率が約27%です。ここから老後期間を、男性は25年(65~90歳)、女性は30年(65~95歳)として、準備すべき老後の生活資金を計算しました。

準備すべき老後の生活資金(計算式=(年間支出-年間収入)×老後期間)は、男性は0円(約603万円の黒字=生活資金は年金で賄える)、女性は約1430万円となります。
  • 男性(老後25年):(178万7016円-202万8072円)×25年=0円(約603万円の黒字)
  • 女性(老後30年):(178万7652円-131万1132円)×30年=1429万5600円
 
出所:
令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
「令和3年簡易生命表の概況」寿命中位数等生命表上の生存状況(男)(女)

算出したのは、一般に現役時代の70~80%といわれる「基本的生活費」です。安寧な老後を過ごすためには、医療・介護費用や余暇費用などの予備資金も必要です。特に医療・介護費用は、2人以上の世帯に比べ、どうしても他者に頼らざるを得ません。その分だけ少し多めに見積もる必要があります。

男性の多くは、老後の生活費は年金で賄い、万一の支出は退職金で対応できそうです。一方、女性は「老後資金約1430万円+予備資金(1000万~2000万円程度)」を退職金でカバーするのはかなり難しいと考えられるので、周到な準備が必要です。

対策は、「支出削減+貯蓄+収入アップ」の実行につきます。

まずは固定費(通信費や保険料、家賃等)や交際費、使途不明金の支出内容と支出額を定期的にチェックし、生活をシンプルにしましょう。

貯蓄は、自分の収入や能力に応じた金融商品、例えば私的年金・保険商品・外貨預金・預貯金・投資信託・金・株式などでコツコツと蓄え運用します。

収入アップは、少し長く働くことや副業・リスキリング(学びなおし)などでの可能性を考えてみましょう。70歳くらいまで細く長く収入を得る道につながれば最高です。

また、老後資金と同じく、いえそれ以上にコツコツと時間をかけて作り上げる必要があるのが「つながり」です。

ITスキルは「生存のためのつながり」への必須ツール

「つながり」のイメージはコロナ禍を境に激変しました。新型コロナウイルス感染症対策として、外出を最小限に絞り込んだこの数年、IT弱者もテレビ電話・ビデオ電話・メールなどで遠く離れた子どもや孫、友人知人と交流を深め、ネット経由で必要な物資や情報を入手・発信するようになりました。

人間には「生存するためのつながり」が必要ですが、「生存のためのつながり=親戚・友人知人・近隣の人」から人や距離の縛りが消えたのです。ITスキルは、おひとり様を孤独や孤立の恐怖から解放し、おひとり様の生活を支え、社会や人やモノとつながる必須ツールになりました。

とはいってもネットでは構築できない「つながり」があります。それは生活や身体のサポートを受けるための「生存するためのつながり」、そして死後の整理のためのネットワークです。「どこ(誰のそば)に住むか」の選択は、このネットワークの中で生きるための選択でもあります。終の棲家は、現在の家だけでなくケアハウス、有料老人ホーム、シニア向け賃貸住宅、サービス付き高齢者向け住宅など多種多様です。

生活や身体サポートに関しては、介護保険を中心に公的なサービス内容や利用費用等に加え後見人制度についての知識も不可欠です。そして、介護・看取り・死後整理に対する考えを、サポートしてくれる親族や友人、地域包括センターの担当者、後見人などに素直に伝えて、それが実現可能な居場所を元気なうちに探すといいのではないでしょうか。

シンプルが一番!

最後に、安寧な老後には、生活スタイルと思考の見直しも必須です。終の棲家への転居や死後整理を考慮して今から生活スタイルを整え(=生前整理)、「比較」「執着」「義理」などを手放して人間関係や家計をシンプルにしましょう。無駄な支出が減り、豊かで平安な老後につながりますよ。「Simple is Best」ではないでしょうか?
 
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