学生時代にどれだけ勉強したかを問われない「就職活動」
ではなぜ高校時代はそこまで興味もない科目を必死になって勉強したのだろうか?それは高校卒業の進路(進学)の選択肢が、その教科の学びの成果(試験の点数)で左右されたからだ。自分の希望とする進路(志望大学)に進むために、勉強しなければならないのであれば、日本の勤勉で優秀な若者は興味の有無関係なく勉強するのだ。
残念ながらこのロジックが大学生活の学業には通用しない。なぜならば、大学卒業後の進路では、大学院に進学する学生以外は成績含めて大学でどれだけ勉強したのかは、進路の選択肢にはほとんど影響しないからだ。
進学以外の選択肢は就職である。就職活動では筆記試験以外で学力を問われる場面はほとんどない。もちろん履歴書で学部学科や卒論の内容を書く欄があるかもしれないが、面接で聞かれるのは「ガクチカ」といわれる「学生時代に力を入れた活動」だ。
それは企業が仕事で活躍する上で必要な力は「学力」としていないからだ。地頭の良さはどの企業も求めるが、それ以上に、他者とコミュニケーションを取り合いながら物事を進める「協働力」や、目の前の課題の原因を考えて解決していく「問題解決力」など、社会で求められる能力は幅広くある。それらの能力があるかを判断する上で、大学の学業だけでなく、サークルやアルバイトなどの活動についても深く聞くのは当然だ。
毎年、授業はそんなに真面目に受けていないのにサークルやアルバイトで活躍していた先輩が優良企業に就職を決めていく姿を見ていれば、後輩たちも勉強しなくなってしまうのも納得できてしまう。
「社会に出て生かせる力」が身につく大学の授業
このような状況に対して大学側も黙っているわけではない。少子化の中で、大学も生き残りに必死になっている。大教室での大人数授業が当たり前だった大学も、今は1年生から30人程度の人数で構成される「初年次ゼミ」というクラスがある大学も多く、そこで論文の書き方などを教える大学もあれば、PBL(Project Based Learning)と呼ばれるプロジェクト学習を中心とした新しいスタイルの授業を行う大学もある。
4~5人の学生のグループで、さまざまな課題に対して自ら情報収集をしながらアイデアを出し合い、プレゼンテーションで発表し合うなど、かつての「90分間受け身の授業」とは真逆の授業である。これら授業プログラムを考えたり、大学に導入したりするのも筆者のもう1つの仕事なのだが、授業に取り組む学生たちの様子を見る限り非常に可能性を感じる。
なぜならこういった能動的な授業で活躍する(=良い成績を取る)学生は、明らかに社会に出ても活躍するだろうと感じさせられるからである。このような授業が大学に多くなれば、将来的に就職活動時に「大学の授業を頑張りました」とアピールする学生とそれを評価する企業も増えるはずだ。
勉強しない大学生だけを非難していては何も変わらないが、勉強したくなる環境や授業づくり、そしてそれを評価する仕組みづくりで学生の学びへの姿勢を変えていくことはできるだろう。
<参考>
※:日本の高校生が世界的に見ても「超優秀」といえるワケ。でも能力を生かさず海外に抜かれていく実情も