大学生の就職活動

「内部進学組」は自己肯定感高め、「一般入試組」は能力に安定感? 入学方法別に学生の特徴はどう違う

就活において大学名だけで評価されてしまう「学歴フィルター」問題がたびたび話題になるが、実は最近新卒採用をする企業が大学名以外にも重視しているのは「どの入試制度で入学したか」。今回は入試制度別の学生の特徴と就活への影響を解説する。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

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推薦・内部進学・一般入試……新卒採用で意外と重視?

以前、都内にある某中堅私立大学の1年生ゼミにおけるグループ分けについて、担当教員の先生方と議論する機会があった。グループワークやプロジェクトを多く行うため、コミュニケーション力のある学生や、思考力がある学生など、さまざまな能力を持つ学生を各グループに分散させるために有効な方法を模索していた。

大学1年生の前期という学生情報がほとんどない状況の中で学生の能力や特性を見極めてグループに分類するのは簡単なことではないが、実は「学籍番号順にグループを割り振る」という極めてシンプルな方法が有効であることが分かった。

学籍番号は入学が決まった順番に割り振られるので、入試制度ごとに連番になっている。入学方式別に学生の特徴にも傾向が出るため、学籍番号順で割り振ると、さまざまな特徴を持った学生を分散させることができるというわけだ。
 

大学生活に前向きな状態で入学する「特別選抜組」

学籍番号が最初に決まっていくのは「特別選抜」と呼ばれる推薦入試を活用した学生たちだ。特別選抜には大きく分けると2種類あり、自己推薦型の「総合型選抜(旧AO入試)」公募制や指定校制の「学校推薦型選抜」に分かれる。

これらの入試を活用した学生たちは早い段階で志望校を決め、高校3年生の秋には進路が決まる。学力試験が求められないのでそこまで受験勉強に時間を費やす必要もなく、卒業まで高校生活を謳歌して余裕を持って大学に入ってくる。

多くの学生が自分の志望する大学にそのまま入るので、入学時のモチベーションは高く大学生活への期待値も高い。そのため授業にも比較的前向きに取り組む姿勢を見せる学生が多い。また学校推薦を受ける学生は、高校時代に部活動や生徒会で活躍していた生徒や先生方との関係構築も上手にできる器用な生徒も多く、コミュニケーション能力も高い。そのためゼミのグループワークでは積極的にリーダーを務めてくれたり、周囲と連携を図ろうとしたり、クラスでは気の利いた動きをしてくれる。

しかし実は少子化の影響で定員割れが続く中堅以下の大学では、この推薦入試が早期学生獲得の手段として必要以上に活用されてしまっているのが社会問題になっている。中には入学者数を増やすために、半数以上の学生を学力試験のない推薦入試で入れてしまう大学も増えており、学生の学力不足によって授業が成り立たない大学が出てきているのも現実だ。

グループで気の利いた動きをしてくれることの多い推薦入学の学生は、情報収集や情報分析のような頭を使う場面になると急におとなしくなってしまうこともある。
 

モチベーションは低くても能力は高い「一般選抜組」

学籍番号が後半に決まるのは一般入試を受けた学生たちだ。

この学生たちは高校3年生の多くの時間を受験勉強に費やし、高校卒業のギリギリまで進路が決まらない生徒もいる。その努力が実って第1志望に合格できる生徒もいるが、当然第1志望は叶わず第2、第3志望、場合によっては浪人という選択をする生徒もいる。

そのため一般選抜組の入学時の状態は、志望大学に入学できたかどうかで大きく分かれる。偏差値上位の大学であれば第1志望で合格した学生の割合は高いので、その学生たちは達成感と自信にあふれた状態で大学生活をスタートする。難しいのは中堅以下の大学で、半数近くは上位の大学に落ちてしまい、浪人するほどの余力もなく、渋々第2志望としてその大学に入ってきた学生たちだ。うまく切り替えができる学生であればいいが、第1志望に入れなかったという負い目を抱えている学生は、大学生活への期待値も低いため、授業も必然的に消極的になる。

しかしゼミの教員にとっては、この一般選抜組(=学力のある学生)がクラスやグループに何人いるかが、その後の授業運営においては重要になる。やはりたとえ第1志望に入れなかったとしても、受験勉強を通じて培った思考力や計画力、やりきる力は、大学の授業においても大きな土台となるので、課題やグループワークにおいても一般選抜組の多いチームは安定感があるのだ。
 

高い自己肯定感と経済的ゆとりのある「内部進学組」

推薦や一般入試以外の大学入学ルートでもうひとつあるのが、系列の高校を持つ私立大学などに多い「内部進学組」である。内部進学とはいえ学内選考もあるので一概には言えないが、基本的には中学受験や高校受験でそこに入ると、そのままエスカレーター式で系列の大学に行けるシステムを持つ学校が多い。

そのほとんどが私立の学校で学費も高いため、経済的に豊かな家庭の子が内部進学組には多い。有名私立大では、苦労して入学した一般入試組と、一見特に努力することもなく上がってきたように見える内部進学組とで温度差があることはよくある話だ。 経済的に余裕があるからか、幼少期から大切に育てられたからか、内部進学組には自己肯定感が高い学生が多い

家も裕福で世間知らずのようなイメージを持たれがちな内部進学組ではあるが、高校受験や大学受験に必要以上に時間と労力を費やさない代わりに、留学やボランティアなどを経験している学生も多く、そのような多様な体験も自信の裏付けになっている。
 

大学名よりどの入試制度で入学したかを重視する企業も?

大学生活における入試制度別の学生の状態や傾向について書いたが、就職活動でも当然それらの影響は出てくる。

まず差が出るのは企業の一次選考におけるSPIを代表とするWEBテストや筆記試験だ。多くの試験は言語、非言語などの学力試験を含んでいるが、一般入試を経験した学生は国語や数学の土台があるためそこまで苦労することなく高得点を取ることができる。逆に偏差値の高い有名大学の学生であろうと一般入試を経験していない特別選抜組、内部進学組は大苦戦する

このような背景もあり学力(=情報処理能力)を重視する企業は、偏差値の高い大学だけで評価することはせず、その大学にどの入試制度で入学したかまでを面接で聞く企業もある。有名大学のブランドは確かに武器になるかもしれないが、学力を問われることなく入学する学生も多い現代では、一般入試でしっかり勉強を積み重ねた上で入学したこと自体が評価になるのである。

とはいえ、特別選抜組のコミュニケーション力や、内部進学組の高い自己肯定感も就職活動で武器になることは間違いない。それぞれの学生が経験から得た強みを持っているので、存分に生かして就職活動に臨んでほしい。

>次ページ:令和2年度(2020年度)、入試方式別の入学者割合
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