マネジメント

大赤字「楽天モバイル」の行方と、三木谷社長がとるべき野心と現実のバランス(2ページ目)

楽天が2022年12月期決算を発表し、最終損益で過去最大となる3728億円の赤字を計上しました。インターネット関連事業や金融事業は好調を続けていながら、モバイル事業が4928億円の赤字となり大きく足を引っ張っています。平成生まれのビッグカンパニーの行く末は今後どうなるのでしょうか。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

3つ目の難題:「つながりの悪い通信環境=プラチナバンド問題」

楽天 2022年度通期及び第4四半期 決算資料より

楽天 2022年度通期及び第4四半期 決算資料より

そして、契約者の増加を阻んでいる大きな要因の一つが、3つ目の難題である「つながりの悪い通信環境=プラチナバンド問題」です。プラチナバンドとは、我が国の電波利用においてもっとも携帯電話に適してつながりやすい、700MHzから900MHzの周波数帯のことです。

国内のプラチナバンドは先行3大キャリアに独占され、現在空きはありません。後発の楽天に割り当てられた周波数は1.7GHzであり、屋外では大きな問題はないものの、室内での先行3社に比べた接続の悪さは利用者の知るところです。これが改善しないことには、いかに基地局整備を進めようとも「つながりにくい」楽天は解消されないのです。

そこで楽天は、「3社独占のプラチナバンドを公平に分けろ」と総務省に嚙みつきようやく議論が前に進み、昨年11月には3キャリアの工事費負担で一部の電波領域を楽天に分け与える方針が打ち出されました。

しかし自らの腹を傷ませたくないドコモの提案によって、700MHz帯の3キャリアの携帯電話帯と、隣接する地上波テレビ帯などの間に存在する空き部分に、3MHz幅×2の携帯電話4Gシステム導入を検討する運びに変更。プラチナバンド入手を急ぎたい楽天は、とりあえずこれを受け入れる姿勢を見せています。

ただしこの案では、3MHz×2部分利用に向けた工事費用は楽天が負担することとなり、かつ3MHz×2は楽天が希望していた15MHz×2の5分の1の容量に過ぎず、今後契約者数が増えた折には収容しきれなくなることが確実なのです。

このように楽天にとってプラチナバンド問題は依然未解決問題としてこの先も尾を引く形となり、今後も他3キャリアにはないコスト要因として存在し続けることとなる様相なのです。

>次ページ:楽天が大赤字の「モバイル事業」に固執するワケ
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