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自賠責保険が2023年4月に改定される!
2023年4月から自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の保険料が改定されことになりました。自賠責保険については、そもそも財務省が自賠責保険の積立金からの借入金である約6000億円が未返済になっていることが2022年中に様々なメディアで報道され、問題視されました。インターネットなどでも「国民に負担させるはおかしい」と批判がでていました。
その問題を踏まえて、今回の自賠責保険料の改定を見てみましょう。2023年1月18日に損害保険料率算出機構が自賠責保険料の改定の届出を金融庁長官宛てに出したことで(2023年1月30日適合性審査終了)、具体的な改定後の保険料の方向性がみえてきました。
自賠責保険料改定の背景
自賠責保険料率はこのところ改定が続いています。過去3回ほどを遡ると、2021年4月(平均-6.7%)、2020年4月(平均-16.4%)、2017年4月(平均-6.9%)と続けて平均の自賠責保険料が引き下げられています。今回の改定は交通安全にかかる政府の施策やコロナ禍で定着した生活様式の変化等を背景に収支の改善が見込まれることが背景にあります。
他にも過去の契約分の収支の差額と利息の累積等(滞留資金)が2021年4月1日改定の見込みより増えたことを踏まえて改定が実施される見込みとなったことが改定の理由です。
自賠責保険はノーロス・ノープロフィットの原則によって損失や利潤がでないように算出されています。余剰などがでれば保険料に還元されて引き下げられ、逆の場合には引き上げられます(地震保険も同様の仕組み)。
近年は先進安全技術を搭載した安全運転サポート車が普及していることもあり、交通事故も減少傾向のため、過去の改定にはこうしたことも関係しています。
自賠責保険の平均改定率
自賠責保険料率は全体の平均で「11.4%」の引き下げです。2023年4月1日以降の保険期間より適用されるます。冒頭で説明した財務省の借入の未返済の件がありますので、「あれ、自賠責保険料が下がるの?」と思った人も多いかもしれませんが、その内訳をよく確認する必要があります。損害保険料率算出機構による自賠責保険の基準料率届出の案内をみると-11.4%引き下げの内訳について次のように書かれています。
- 純保険料率で12.4%の引き下げ
- 社費率・代理店手数料率で0.2%の引き下げ
- 被害者保護増進等事業に充当するための付加金の新設による引き上げ相当分が+1.2%
上の2つのうち1つ目は将来、事故が起きたときなどに支払う保険金として充てられる部分です。2つ目は保険事業の経費に充てられる部分ですので保険事業に必須の項目ではあります。
問題は最後の3つ目です。この部分が財務省による過去の借入の未返済があり、積立金が不足する懸念があって今回新設されたところです。
もともと自賠責保険は、保険金支払いとは別に事故で後遺障害を抱えた被害者支援などにも使われています。財務省が自賠責保険の積立金からの過去の借入金、約6000億円の未返済によってこの被害者支援のための資金に問題がでてきました。
財務省の借り入れ問題がなければ、さらに保険料の引き下げも可能だった?
そのため被害者保護増進等事業に充当する賦課金(引上げ相当分として 1.2%)として、このたびの自賠責保険の改定にそれが上乗せされているかたちになります。これがなければさらに引き下げが可能だったことになります。被害者支援のための資金の不足が必要なら仕方がない面があるものの、不足の原因が財務省の借入の未返済によるものです。財務省の借入金の未返済が原因で、保険料が上乗せされてしまうのは納得できないと思う人もいるのではないでしょうか。
次に参考までに自賠責保険料が主要車種でどの程度変わるのか確認してみましょう。
■保険期間24カ月
- 自家用乗用自動車 改定前20,010円→改定後17,650円(-11.8%)
- 軽自動車(検査対象車)改定前19,730円→改定後17,540円(-11.1%)
- 小型二輪自動車 改定前 9,270円→改定後 8,760円(-5.5%)
- 原動機付自転車 改定前 8,850円→改定後 8,560円(-3.3%)
【自家用乗用車の自賠責保険料の改定の推移 保険期間24カ月本土用】
- 2023年:17,650円
- 2021年:20,010円
- 2020年:21,550円
- 2017年:25,830円
続けて2023年4月改定予定の自賠責保険料について、主な車種ごとにみていきます。
2023年4月改定予定の自賠責保険料表
ここから2023年4月1日から改定予定の主要車種および主な保険期間の自賠責保険料の一覧をみてみましょう(本土用)。 出所:損害保険料率算出機構 自賠責保険基準料率届出のご案内より抜粋して筆者作成離島および沖縄県、他の保険期間は損害保険料率算出機構の届出内容の詳細をみてください。
もともと自賠責保険料が安く、保険期間が短い場合は引き下げ幅が大きくありませんが、継続車検の自家用乗用車の自賠責保険料は2万円を切りました。
自賠責保険の今後の改定の方向性
安全運転サポート車の普及がこれからさらに進むと自賠責保険料の収支の改善はより進むと予想されます。永遠に保険料が下がり続けることはありませんが、現状は任意の自動車保険も近年保険料率の改定が続けて行われており、概ね横ばいもしくは若干引き下げです。今回の財務省の借入金の未返済によって自賠責保険そのもののあり方を問う意見もでてきています。
自賠責保険料は全体の平均で引き下げられることになりましたが、国民負担が増える状況です。財務省の借入金の未返済の問題については、今後も覚えておくようにしましょう。
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