雇用保険料引き上げの背景は?
雇用保険料率が引き上げられる背景には、新型コロナウイルス感染症の影響により「雇用調整助成金」の申請が増加したためです。「雇用調整助成金」とは、事業主が労働者に「休業手当」を支払った場合、その一部が助成されるもので、令和4年度の集計では累計約766万件、週当たり約2万件が申請されています。
〈参考〉厚生労働省 雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
2023年4月からの引き上げ率は?
雇用保険料率は2022年10月にも引き上げられており、2023年4月からの引き上げは直近一年間で2回目となります。保険料率は0.2%(労働者0.1%、雇用主0.1%)引き上げられ、一般の事業であれば労働者負担率は現在の0.5%から0.6%に、雇用主負担率は0.85%が0.95%となります。 内訳としては労使折半とされている「失業等給付」と「育児休業給付」に関わる雇用保険料のうち「失業等給付」分が、労使それぞれ0.1%引き上げた形になっています。〈参考〉厚生労働省 第179回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会
引き上げによる家計への影響は?
今回の保険料率引き上げによる家計への影響はどの程度なのでしょうか。雇用保険料は、給与や賞与の額面に保険料率を掛けて算出します。今回の労働者の負担割合は0.1%の増加ですので、例えば毎月の給与額面が20万円の方、30万円の方の雇用保険料増加分は以下となります。
給与20万円の方:20万円×0.1%=200円
給与30万円の方:30万円×0.1%=300円
まとめ
今回は2023年4月からの雇用保険料率変更について解説してみました。文中にも書きましたが、この一年で料率の変更は2回行われており、引き上げられるのは「失業等給付」に関わる保険料です。
本来「失業等給付」に関わる保険料率は労使で0.8%(労働者0.4%、事業主0.4%)なのですが、これまでは低い料率が用いられていました。ところが、新型コロナの影響により失業による給付金の支払いが多くなり、本来の料率に戻さざるを得なくなったという財政事情がうかがえます。
とはいえ昨今の物価上昇の中、月数百円であっても家計にはありがたくない料率の変更であり、これまで以上にしっかりとした家計管理が必要となってくるかと思います。