逃げ出したいくらい大変だった
――大変な撮影だったのですね。藤ヶ谷:どのような仕事でも楽なことはなく、スタッフや俳優たちは大変な経験を乗り越えて作品を完成させています。ただ僕は今回、逃げているうちに行く場所がなくなり、精神的に追い詰められていく男だったので、正直、楽しいと思える瞬間はありませんでした。裕一と同じように「逃げたい」と思ったこともあります。
でも今逃げたら、この映画に関わる人たちに迷惑がかかってしまうし、そもそもすぐにマネージャーに居場所がわかってしまうし……と、逃げた後のことを妄想して、踏みとどまりました(笑)。 ――裕一は都合が悪くなると、すぐ逃げてしまいますが、そんな裕一に対してどう考えて演じていたのですか?
藤ヶ谷:側から見ると責任感のないヤツに見えるかもしれませんが、裕一なりに生きることに必死なんです。人を困らせようとはしていないし、最初から逃げることを考えているわけではない。でも、想定外のことが起こると対応できなくなり、結果的に逃げてしまう。根は悪い男じゃない。悪人じゃないからこそ、助けてくれる人が現れるんだと思います。
だから僕は「裕一は生きることに一生懸命なんだ」と思って演じました。その一生懸命さが空回りして滑稽さになるので、裕一の人生をひたすら真面目に演じました。
三浦監督との仕事で得たものとは
――藤ヶ谷さんは、本作の三浦大輔監督と舞台と映画でお仕事をされましたが、三浦監督とのお仕事で得たものはありますか?藤ヶ谷:僕は、『A-Studio+』(TBS)でMCをやらせていただいているので、多くの俳優さんにお会いする機会があります。これまで三浦大輔監督とお仕事をした経験のある人と共演すると必ず「あの三浦組を経験した方ですか!」という話になりますね(笑)。「三浦監督の現場を乗り越えた!」というだけで、気持ちを共有できる気がします。
ただ、確かに三浦監督の現場は厳しいのですが、必ず俳優から芝居を引き出してくださいます。「自分はこういう芝居もできるんだ」と発見することが多く、自分の知らなかった自分に出会える。新しい扉を開いてくださる監督で、やはりすごいパワーのある方だと思います。
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