亀山早苗の恋愛コラム

両親に「ぶたれてホッとして」。殴られて育った私が「殴らない」男性との恋愛にたどりつくまで(3ページ目)

父母のどちらかからではなく両方からの暴力が日常だったと振り返る女性がいる。幼少期から明確な理由もなくDVを受け続けてきた30代女性は、「ぶたれるとホッとする」自分の感覚が“おかしい”ことにすら気づいていなかったという。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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再会した母は、しれっと言った

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笑い話のように殴られた話をしたら、先輩の顔色が変わったのだ。彼女は臨床心理士を紹介され、カウンセリングに通った。自分でも読書を重ね、DVや人の心理を研究した。

「カウンセリングに3年通って、やっとうちの親がおかしくて、私は何も悪くないと思えるようになりました。手を上げること自体が間違いだとわかった」

親とは連絡を断っていたが、30歳になったとき、母親に会ってみた。殴って育てた娘を見てどう思うかと尋ねると、母は「子育てしているときは忙しかった。お父さんは浮気を繰り返していたし、私は仕事もしていたから、毎日が苦労の連続。特にあんたは言うことをきかなかったし」としれっと言った。

「でもあんたが立派に働いていて、よかった。私の子育ては間違ってなかったのねと言ったんです。それを聞いて、私、思わず母親をビンタしてしまいました。そんなことをした自分にショックを受けた。でも、これですべてチャラにしようと妙にすっきりした気持ちにもなったんです」

その直後、ある男性と知り合い、つきあうようになった。彼は穏やかな人で、ユカリさんの笑顔が好きだと言ってくれた。1年経っても、彼は手を上げるどころか、一度も声を荒げたことすらない。こういう人が本当にいるんだと彼女は感動したという。

「そのまま彼と結婚して2年半たちます」

そして彼女は、今、妊娠していると言った。

「親になるのが怖くて、結婚しても子どもはいらないと言っていたんです。だけど夫のお姉さんのところの子がかわいくて、しょっちゅう一緒に遊ぶようになって……。夫が『きみなら親になっても大丈夫だと思う』と言ってくれた。私も子どもがほしいと素直に思ったんです。本当はまだ怖いと思うこともあるけど、親と私は違う人間、私は暴力の連鎖はさせないと固く誓っています」

夫がいることで、暴力や支配は愛情ではないと身をもって知ったユカリさん。これから、子どもを愛することで、自分自身も子ども時代をやり直すつもりだときっぱり言った。
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