亀山早苗の恋愛コラム

両親に「ぶたれてホッとして」。殴られて育った私が「殴らない」男性との恋愛にたどりつくまで(2ページ目)

父母のどちらかからではなく両方からの暴力が日常だったと振り返る女性がいる。幼少期から明確な理由もなくDVを受け続けてきた30代女性は、「ぶたれるとホッとする」自分の感覚が“おかしい”ことにすら気づいていなかったという。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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私は「頭も顔も性格も悪い」と思っていた

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兄は大学に行ったが、3歳違いのユカリさんは高卒で就職するのが既定路線となっていた。大学を受けさせてもらえるかもしれないと勉強して、学年で1番になったこともある。こっそり受けた模試でも偏差値が高かった。

「大学に行きたいと言ったこともあります。母は『はあ? 妹がいるのに何を言ってるの』って。5歳離れた妹は、中学から私立でした。あんたは働くのよと言われて、就職先を決めました。『頭も顔も性格も悪い』と親には言われていたので、自分でもそうだと思っていたんでしょうね」

ただ、心の底に反発する気持ちも残っていた。だから就職すると同時に、こっそり家を出てアパートを借りた。

「母親が勤務先にやってきて、未成年の子どもにひとり暮らしをさせるなんて、どういうことなんだと騒ぎ立てました。私、そのときにはすでに上司に『うちの親はヤバいです』と言ってあったんです。それを信じてもらうためにも、必死に働いたし、誰からも好かれるように頑張った。上司たちは親をなだめてくれました。母が帰ったあと、上司に呼ばれて『あなたが頑張っているのはわかっている。親から逃げたいと思っているなら協力する』と言ってもらえたんです。その言葉を聞いて、私、急に涙が止まらなくなりました。生まれて初めて出会った“味方”のような気がして。社会に出てよかったと思えた」

会社の支援もあって、彼女は専門学校に通ってスキルを磨いた。以来、勤続16年になる。何があってもこの会社のために頑張ろうと決めているそうだ。

「とはいえ、私生活ではいろいろ失敗しました。やっぱり呼んでしまうんでしょうか、20歳のときに付き合った男には毎日、体に痣が残るほど殴られた。逃げましたが、数年後に付き合った男性も、最初は優しかったのに1年くらい経つと暴力をふるうようになった。でもそのとき私、やっぱりホッとしたんですよね。ああ、殴ってくるくらい愛しているんだなと思っちゃって。そういう考え方がおかしいと言ってくれたのは会社の先輩でした」

>DV経験を話すと先輩は顔色を変えて
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