「全く酔っていないから大丈夫!」 それでも飲酒運転が危険なのはなぜか
「ちょっとだけなら、一杯だけなら平気」は通用しない!
「少し飲んでおいたくらいの方がいい」
こんな言葉を口走り、飲酒運転をする人がいます。本人は全く酔っていないと思っているのかもしれませんが、これはとんでもない勘違いです。こういう無知で身勝手な人がいるために、飲酒運転による死亡事故が今なお絶えないのです。
もし泥酔するほど飲んだ場合、感覚や運動に障害が起きます。この状態の運転が危険なのは当然ですが、泥酔時は車を動かすこと自体が、まず難しいことだと思います。一方で、そこまでの深酒ではなく「ほんのちょっと飲んだだけ」、あるいは「そろそろ酔いが醒めてきたから」と車を運転するのは、もっと危険であり、悪質なのです。その理由をわかりやすく解説しましょう。
「お酒を飲むと頭が冴える」は危険な錯覚……メタ認知力を失い、判断も異常に
お酒を少し飲むと、心と体の緊張がとれるため、頭が冴えてくるような感じがします。「一杯ひっかけておくと仕事がはかどる」などと言う人がいますが、それは当人の錯覚に過ぎません。「ちょっと飲んだ方がうまく運転できる」というのも同じで、単なる錯覚です。お酒を飲み始めると、脳の中で最初に前頭前野が麻痺され、感情や行動のコントロールができなくなります。「抑止力が働かない」というのは、非常に危険なことです。「少しくらいスピードを出しても平気」「どうせ夜道なんて誰も歩いていない」「信号無視しても平気」などと考えるようになり、自ずと無謀な運転になります。おまけに、前頭前野が麻痺して判断力が低下すると、本人は「自分はしっかりしている」と思い違いをしてしまうため、自分の異常にまったく気づかなくなってしまうのです。
酔っぱらいに「そんなに飲んで大丈夫?」とたずねると、たいてい「ぜんぜん平気だよ!」と答えますが、明らかに平気じゃないですよね。酔うと自分の異常を認めることができなくなる、つまり「メタ認知力」(参考:「メタ認知とは何か…認知症の本質とも言える「メタ認知の障害」」)が失われてしまうということを忘れてはなりません。