「中学受験」するなら低学年でやっておくこと5つ
「中学受験」低学年でやっておくこと
1. 読書習慣をつけること
将来、中学受験する子がしておくべきことの1つ目は、読書習慣をつけることです。「うちの子、全然読書しなくて……」という保護者のなかには、子どもに「勉強になる本」を無理に与えていると感じることがあります。例えば、読書習慣のない大人に「論語」「老子」「武士道」などをおすすめの本として紹介しても、時間や心のゆとりのなさを理由に読むことを躊躇してしまうでしょう。子どもも同じです。子どもにとって、親からすすめられる本は、「論語」や「老子」です。
子どもに読書習慣をつけさせるためには、読む本のハードルをもっと下げる必要があります。読書とは、書いてあるものを読むことです。文字が書いてあれば、その文字を読むだけで学習効果が得られます。マンガや雑誌を読んだり、テロップ付きのアニメやYouTubeを見たりすることも書いてあるものを読むことですので、学習につながります。ゲームに出てくるテロップを読むことも同じです。まずは、お子さんが興味を持っている対象で、文字を読む習慣をつけることから始めてみましょう。
2. 運動習慣をつけること
中学受験する子がしておくべきことの2つ目は、身体づくりです。未就学児・小学校低学年の子は、特に優先しておこないたいものです。「うちの子、やる気がなくて」と親に嘆かれている子どもの多くは、勉強しないよりもした方がいいとわかっている子がほとんどです。わかってるけど、勉強ができない。それは、勉強のおもしろさを味わえていないため、または、疲れて眠いためです。おもしろくて体力も十分なら、子どもはいくらでもやり続けます。しかし、たとえどんなにおもしろくても、疲れていると集中力も低下して学習効果も下がります。体力がすべての基本だということに、わが子が小学5年生になる頃に気づく保護者も多くいらっしゃいます。
したがって、未就学・小学校低学年のお子さんには、運動系の習い事を週2回のペースでやることをおすすめします。週1回ではなく、週2回くらいのペースで習うと、運動・スポーツのスキルが身につくのが早いからです。小学5・6年生の保護者から話を伺うと、多くの方が「うちは週1回だったから、あまり身につかなかった」とおっしゃいます。一方で小学5年生の後期になってつくづく「身体を鍛えておいて良かった。単元が難しい上に通塾日数が増えてテストもほぼ毎週、テキストも増えて肩に重くのしかかる。多少体調が悪くても踏ん張れる体と心が大切」とおっしゃる方もいます。子どもの運動習慣は早めにつけて、体力アップを目指しましょう。
3. さまざまな体験をさせること
中学受験する子がしておくべきことの3つ目は、さまざまな体験をさせることです。わが子に中学受験をさせようとすると、ワークやドリルを買ってきてやらせないとなどと思いがちですが、もっと大事なことがあります。それは、ワークやドリルで勉強する内容の一段階上の、抽象的なイメージを頭の中に描けるようにすることです。受験の学習内容は、私たちの世界のさまざまな具体的な事象の一部を切り取って抽象化したことで構成されています。物語の読解、計算、化学、物理、地理、歴史、公民などは、本当は、どれもおもしろさに満ちたエンターテインメントです。受験勉強はその世界を知る入口にすぎません。
しかし残念ながら、受験というものは受験日も決まっており、通過できる人数にも制限があります。したがって、学校はテストというかたちで入学者を選抜します。塾はその選抜するためのテストで最大効率化をめざした授業、つまり具体的なおもしろさに満ちた学習内容をどんどん抽象化します。その結果、子どもたちはおもしろみのなくなった内容を、半ば強制的に勉強させられることになってしまうのです。
ところが、中にはそんな受験勉強でも、おもしろいと思う子もいます。受験勉強をおもしろいと思える子に共通するのは、学習内容に具体的な実感、イメージがあることです。いろいろ体験して、具体的なイメージをもっている子は、勉強していると「あ、それは前に体験したあれだ」と具体的なイメージを頭の中に思い浮かべることができるのです。
さらに、お子さんがいま好きなことに、もっとハマれる環境を用意してあげることもおすすめです。好きなことを見つけて、好きなことを追求できる人生は幸せです。好きなことがあれば、それはいずれ受験勉強とリンクする瞬間がきます。受験勉強が本格化する前、好奇心に満ちた未就学・小学校低学年のうちに、いろいろな体験をさせてあげてほしいと思います。
4. 学習習慣をつけること
中学受験する子がしておくべきことの4つ目は、学習習慣をつけることです。学習習慣がついていないのに、中学受験専門塾に入塾するのは、走る習慣がないのにマラソンに参加するようなものです。塾に通って学習習慣がつく子もいますが、塾に通っても学習習慣がつかない子もいます。塾に通ってみないと、学習習慣がつくかつかないかはわからないことが多いです。可能であれば、塾に通い始める前に学習習慣は身につけておきたいものです。学習習慣がついていれば、ある程度スムーズに塾の授業の復習や宿題に取り組むことができます。
例えば、ネットで「学習習慣 つけ方」と検索すると「ハードルを下げて、まずは毎日5分でいいから勉強するようにする」というようなことが書かれています。この方法で学習習慣がつくなら苦労は少ないでしょう。もし毎日5分の勉強ができなかったら、毎日1分の勉強にしてみます。5分の勉強ができない子も、1分であればできるのではないでしょうか。やる気はやらないと出てきません。逆に、やり始めてさえしまえば、そこからやる気が出てきます。
わが子が1分でも勉強するのを嫌がる場合は、ドリルやワークなど、いかにも勉強というようなものでなくて、図鑑を眺めることから始めるのはいかがでしょうか。勉強につながる何かを1分でいいから毎日続けて、それが習慣になるようにしましょう。それすら子どもが嫌がるようでしたら、まだ中学受験塾に通わせるタイミングではないということですし、そもそも中学受験をしないという選択もあります。
昨今、いくら中学受験ブームが加熱しているといっても、東京で特に中学受験率が高い文京区では50%台、港区・目黒区・中央区でも40%台、千代田区・世田谷区・渋谷区で30%台後半、品川区は30%台前半ですからね。中学受験をしない割合の方が高いわけです。中学受験をしないという道もまた、将来の可能性を狭めるものでなく、むしろ広げてくれるものでもあります。
5. 基礎学力をつけること
中学受験する子がしておくべきことの5つ目は、基礎学力をつけることです。「今から基礎学力をつけておきましょう」という当たり前のことをあえて挙げた理由は、当たり前の基礎学力がついていない状態で、中学受験専門塾に入塾してくる子が多いためです。中学受験専門塾は中学受験の専門塾なので、学校の学習内容をフォローする補習塾ではありません。したがって、基礎学力が身についていない状態で中学受験専門塾に入塾すると、授業についていくこと・宿題・復習をやり切るのに苦労することになります。みなさんがすぐ頭に思い浮かぶような中学受験塾は、基礎学力がある前提で授業が進んでいきます。
中学受験塾に入塾するなら、いまお子さんが小学1年生なら小学1年生、小学2年生なら小学2年生、小学3年生なら小学3年生で習う範囲の漢字の読み書き、計算ができて、学校の国語の教科書をすらすら音読できるようにしておくことです。特別に、先取り勉強をする必要なんてありません。当該学年の学校で習う範囲の基礎学力を身につけておきましょう。学校の当該学年の基礎知識を固めることができてさえいれば、SAPIX、Gnoble、エルカミノ、浜学園、希学園などのエリートを集める塾であっても、小学3年生の2月から入塾して遅れをとることはありません。
中学受験をめざすとなると、親としてはどうしても先取りをしたくなるものです。しかし、中途半端に先取りをするくらいなら、足元の基礎を徹底した方が、塾に入り学年が進んでから成績が伸びていきます。基礎さえしっかり身についていれば、いずれ成績は上がります。あわてないで、学校学習内容の復習をしておきましょう。
【参考情報】
令和4年度 公立学校統計調査報告書【公立学校卒業者(令和3年度)の進路状況調査編】
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